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筑紫哲也氏、逝く     


筑紫哲也氏が亡くなった。

「ニュース23」より80年代半ばの朝日ジャーナル「若者たちの神々」が印象に残っている。対談の相手が興味のある人物のときに、パラパラと流し読む程度だったが、4冊にまとめられた本からは当時のトップランナーたちの「気分」が立ち昇ってくる。

ただ、「若者たちの神々」には、浅田彰、日比野克彦、鴻上尚史、桑田佳祐、田中康夫といった同世代の人物が多く取り上げられているため、「神」というには強い抵抗があった。かといって、「~神々」に続く企画である「若者たちの大神」にも「神」と呼べるのは阿久悠しかいないのだが。また、「~大神」に吉本隆明が入っていなのはなぜだろう。


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今は「時代」に挑む精神が消え失せ「個」ばかりがクローズアップされるが、「個」を太刀に「時代」を切り取ろうとする姿勢が絶えることはなく、サムライ・スピリットを携えた数少ないジャーナリストのひとりだった。日本が間違った方向に(戦争の可能性がある領域に)矛先を向けることに極めて敏感で、それを監視し警鐘を鳴らす作業が仕事の基幹を成していたようにさえ思える。

活動の場をテレビに移してからは、ニュースのエンターティナーだった久米宏に対して、アンカーマンの立場をとることに徹していたように見えた。音楽や映画を紹介するにしても社会的な側面から見たコメントが多かったことに「らしさ」を感じた。個人的には、ジャーナリストとして、オモテの筑紫哲也、ウラの竹中労(つとむ)と勝手にとらえていた。

そういえば、竹中労も小田実も、そして『AV女優』の永沢光雄もがんでこの世を去った。今年は8月から、赤塚不二夫、市川準、ポール・ニューマン、緒形拳、峰岸徹、そして筑紫哲也と、少なからず影響を受けた人たちが、いずれもがんで鬼籍に入っている。仕事を全うすることと引き換えに健康を犠牲にした、いわば殉職だったとしても、残念でならない。

冥福を祈ります。

by kzofigo | 2008-11-07 21:51 | ジョブズの流儀