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「人のセックスを笑うな」を観たよ     


 2004年の第41回文藝賞を受賞、翌年の第132回芥川龍之介賞の候補作にも選ばれた、山崎ナオコーラの『人のセックスを笑うな』。この話題の小説を、『犬猫(35mm)』によって、トリノ国際映画祭で審査員特別賞、国際批評家連盟賞、優秀脚本賞をトリプル受賞し、同年の日本映画監督協会新人賞を女性として初めて受賞した、井口奈己監督が2007年に映画化した、これも話題の作品。

 物語は単純だったよ。地方の美大に通う、みるめ(松山ケンイチ)、えんちゃん(蒼井優)、堂本(忍成修吾)の3人のバランスが、山田先生(温水洋一)の同級生で臨時講師のユリ(永作博美)の登場によって、崩れていく。ユリの絵のモデルになったみるめは、ユリとデキてしまい、みるめが好きなえんちゃんはそのことで悩み、えんちゃんが好きな堂本は優しく見守る。しかし、ユリには猪熊さん(あがた森魚)という夫がいて、ユリに夢中のみるめもまた悶々とした日々を送ることになる。そんな感じ。


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 俺はさあ、大学に行ったものの、キャンパスライフっていうものにまったく馴染めず、バイト三昧で大学に全然通ってなかったから、こういうキャンパスライフが中心の映画って苦手なんだよな。奇をてらった題名とは裏腹に、19歳の男と39歳の女の恋愛模様を描いた純粋な恋愛ドラマだった。ただし、色っぽいシーンはYOU TUBEなんかにアップされてるキスシーンだけで、濃厚なセックス描写などは皆無。これが期待ハズレで物足りなかったなあ。

 Wikipediaによると、井口奈己監督は、幼少時から映画は「かわいい女の子が出ている」という基準でしか観なかったそうだ。女性が観たら「かわいい」映画になってるのかもしれないけど、男性客のことも考えてほしかったなあ。ハダカにみるめのパーカーをはおっただけで、股間が見えそうで見えない、あんなチラリズムだけでは満足できないぞー。

 撮影のほとんどが、FIX(固定アングル)の長回しなんだよね。通常なら「カット!」をかける場面以降も長々と映像が続く。だから、俳優自身が抱く「気まずさ」や「照れ」や「戸惑い」まで写り込んでいる。それを「リアリティ」があるととらえ、そこが「かわいい」とか「共感できる」と評価されてるんじゃないかな。それもひとつの手だとは思うけどさ、リアリティは演技で出してこそプロの仕事じゃないの。こういうタイプの映画には慣れている、あがた森魚と温水洋一が、水を得た魚のように生き生きと演技しているから、よけいに自主映画っぽく観えてしまったぞ。


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 とにかく、観ていて「カット!」と言いたい場面が多かったよー。このストーリーで、上映時間137分は、どう考えても長すぎるだろう。90分に編集し直した、レビュアーズカット版を作らせてほしいもんだ。相米慎二や初期のジム・ジャームッシュ、『かもめ食堂』の荻上直子、それから『カナカナ』なんかと見比べて、長回しの是非について考えてみよう、ぜひ。

 僕は男なので、勝手で自由気ままなユリという魅力的な女性には「俺も骨抜きにされてみてー」と思ったし、えんちゃんがウップンを発散するときの男前なやり方には「かわいいなあ」と胸がキュンとしたぞ。あとさあ、永作博美が一心にリトグラフを制作したり、蒼井優が個展のもてなしに置かれているお菓子を全部食べてしまったり、そんなシーンには魅入ってしまって、逆に「カット!」をかけたくなかったよ。その点はよかったな。

 そうそう、みるめのじいちゃん役で桂春團治が出演してるんだよ。舞台は桐生ってミエミエなのに、上方落語の重鎮・ナニワの春團治をわざわざキャスティングした経緯を知りたいよー。

 長回しのなか、俳優がアドリブで出す台詞・演技、それからファミレスのロバが笑えたこと。永作博美と蒼井優がよかったこと、松山ケンイチが「みるめ」にぴったりだったことをオマケして・・・
おすすめ度★★★☆☆


◆参考作品
「人のセックスを笑うな」を観たよ     _b0137183_1633653.jpgカナカナ(1994年作)

29歳の女と13歳の男子の、
奇妙な同棲生活を綴ったドラマ。
ベルリン、モントリオールなど
海外の映画祭に招待された
大嶋拓監督の劇場デビュー作。

by kzofigo | 2008-11-05 15:04 | ムービービーム