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立川談春 赤めだか     

冒頭の一行に続く一節を読んだだけで良筆の匂いがした。

落語家・立川談春が、17歳で高校を中退して立川談志に入門し、

31歳で真打に昇進するまでを綴った自伝の書。


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とにかく文章がうまい。

世間や人間に対する鋭い洞察力。

「間」の取り方が冴えわたるユーモア。

肝要な点を確実にとらえた描写力。

談春の高座を思わせる滑舌のよさ、小気味よいリズムがある。

随筆でありながら、優れた落語の条件を満たしている。

内容がまたいい。

「落語は人間の業の肯定だ」と言い切る談志が放つ毒や

話芸の凄みの中に落語本来の姿を感じ、

「修業とは矛盾に耐えること」と断ずる談志の教えどおりに

修業に打ち込む談春の気真面目さ。

立川志の輔のずば抜けた力量。高田文夫の才能を見抜く眼力。

弟弟子・志らくのマイペースなはぐれ方。

そのほか、桂文字助をはじめ、

談春が前座時代の修業をともにした談秋、談談、関西ら

兄弟弟子たちが仕出かす人間臭い、しくじりの数々。

奥深さの奥が抜けて底なしになったような落語の深さや、

立川一門の有り様がつぶさに見て取れる。

でも、なんといってもこの本の読みどころは、

師匠に「恋焦がれる」談春の眼差しで見た、

巷間伝わるイメージを覆すような、かっこよくて、才気にあふれ、

限りなく優しい立川談志像だ。

最終盤、談志の師匠で喧嘩別れした柳家小さんと談志との

一瞬の邂逅が記されている。

この場面には心を揺さぶられると同時に、呆気に取られるだろう。

今は、この『赤めだか』を「根多」にした、

談春の人情噺が聞きたくて仕方がない。

いい本を紹介してくれて、

かんちゃん
ありがとう。

by kzofigo | 2008-08-07 23:45 | ミュージック・ブック