馬やサイと遊んできた
■見て 触って 楽しむ 生きもの天国
先週の土日、岡山県天神山文化プラザへ。地元の雑誌「オセラ」で紹介した「生きもの天国」展を、見て、触って、楽しんできた。

▲岡山では知る人ぞ知るゴリラ・バーのゴリラ 2氏の共作
出展者は、岡山市在住の立体造形家、久山淑夫氏と西平孝史氏。2人は、20年前に、ゴリラバー・ラリルレロ(岡山市磨屋町)が入ったビル壁面をよじ登るゴリラの彫刻を企画・制作。このゴリラをきっかけに、街で、店舗で、新しい空間にふさわしい美術造形作品を提案・発表し続けている。

▲マグロ(体長約3メートル) 樹脂 2氏の共作 ※実際に寿司店「一丁」の看板だった

▲「Humanity pink dog」と「ガード ドッグ」 樹脂 西平作
五感を全開にして接することで、本来なら動かぬはずの立体作品から、動物たちの息づかいを感じてもらおう。生きものたちが「この地球で一緒に生きる仲間」なんだと、体全体で実感してもらおう。そんな2人の思いと願いが込められた展覧会だ。
会場には、ほぼ等身大の動物像が計25点。2つの展示室を使い、1室に1人分の作品がまとめて展示されている。でも、もしバラバラに置かれていたとしても、どちらがつくった作品かはすぐに分かる。それほど2人のつくり出す動物たちには特徴があり、しかも対照的だ。
▼河馬 3500×1200×1700 (段ボール+棟木) 久山作

たとえば、久山氏の大きく口を開けたカバ。体長3.5メートル、高さ1.7メートル。堂々たる存在感に圧倒されるこの作品は、重ねた段ボールをチェーンソーで削ってつくられている。ほかの作品も、公害・温暖化など自然破壊が進むなか、自然の営みが無限にくり返されることを願って、ナラガシやマツなど隅に追いやられた廃材や古材を使い、動物たちをいとおしみながらカービング(彫刻)されている。その作風は「ワイルド」だ。
▼「ゲート イン サラブレッド」 2400×3600 樹脂 西平作

いっぽう、西平氏による漆黒の馬。高さ2.4メートル、幅3.6メートル。「ゲート イン サラブレッド」と名づけられた作品は、樹脂で精密に再現されている。今にも駆け出しそうな、本物と見紛う迫力がある。生きものたちと真摯に向かいあい、長時間かけ観察し、資料に基づいてつくられている。そのスタイルを言葉にすれば「知悉」(ちしつ)だ。
▼チータ (ナラガシ) 久山作 ※地上を最も速く走ることができる動物
しかし、2人と話をしてみたら、作品から想像する人柄とはまったく逆。「ワイルド」の久山氏はシャイで朴とつ。「知悉」の西平氏は雄弁な情熱家。作家と作品の「柄」が一致していない。そのギャップが面白いと思ったが、考えてみれば、冒険小説家は得てして寡黙で、ミステリ作家は饒舌なものだ。表現する人と表現されたモノの関係って、深いなあ。
さて、「生きもの天国」は実に楽しかった。何より自由だ。作品に触れるだけでなく、動かせるし、作品によっては乗ることができる。このとおり写真撮影もOKで、そのうえカバや犬に乗った来場者を制作者本人が記念撮影してくれるのにはビックリ。
▼ワニ (ナラガシ) 久山作 ※アリゲーター科かな?
ワニのような猛獣やチーターのように個体数が少ない動物は、至近距離で観察できないぶん、一種の憧れがあるものだ。馬やカバにしても接しかたを間違えれば命を落としかねない。そんな生きものたちに触ったり、乗ったり、抱きしめたりできる体験は、ただ単純にうれしくて、気分がよい。馬の胴体の下に寝そべって見上げた光景は「目からウロコ」だった。


そのシルエットはみごとなまでの流線形。また、原寸大のコーガンを触ってみると
陸上競技のホーガンと同じ大きさ。馬はココまで馬並みなのかと妙に納得。
▼「フューチャー シープ」 Ⅰ~Ⅲ 樹脂 西平作 ※御幸毛織からの依頼
親子連れも多かった。普段は動物園やテレビで離れて見ているだけの動物に触れるし、乗ることもできる。子どもたち以上に、親のほうが嬉々としている姿が目立った。うん、それもよく分かる。ロフトのように設えられた階上から展示フロアを見下ろす。テレビやコミックを通じて動物たちに親しんできた世代としては、久山フロアはテレビ番組『野生の王国』を、西平フロアは手塚治虫の『W3』(ワンダースリー)や『ジャングル大帝』を思い出した。


素材感から表情まで「造形」の魅力をじっくり楽しめる。ぬいぐるみやフィギュアとは違って、等身大だからこそ、そして1人の人間が精魂こめてつくった生きものだからこそ伝わってくる、命の輝きを感じることができる。

▲「子牛」 樹脂 西平作 ※アーガイルな牛である
命の輝き、そして命を輝かせているものを、正面からとらえようとする2人の姿勢は感動的だし、正真正銘、一生懸命だ。「ものをつくる」ことに一生、命を懸けている。費やされた時間とエネルギーをたっぷりと内包した作品たちと出合えた、この喜び。
常設にしてほしいと思うほど楽しい展覧会だった。
先週の土日、岡山県天神山文化プラザへ。地元の雑誌「オセラ」で紹介した「生きもの天国」展を、見て、触って、楽しんできた。

出展者は、岡山市在住の立体造形家、久山淑夫氏と西平孝史氏。2人は、20年前に、ゴリラバー・ラリルレロ(岡山市磨屋町)が入ったビル壁面をよじ登るゴリラの彫刻を企画・制作。このゴリラをきっかけに、街で、店舗で、新しい空間にふさわしい美術造形作品を提案・発表し続けている。


五感を全開にして接することで、本来なら動かぬはずの立体作品から、動物たちの息づかいを感じてもらおう。生きものたちが「この地球で一緒に生きる仲間」なんだと、体全体で実感してもらおう。そんな2人の思いと願いが込められた展覧会だ。
会場には、ほぼ等身大の動物像が計25点。2つの展示室を使い、1室に1人分の作品がまとめて展示されている。でも、もしバラバラに置かれていたとしても、どちらがつくった作品かはすぐに分かる。それほど2人のつくり出す動物たちには特徴があり、しかも対照的だ。
▼河馬 3500×1200×1700 (段ボール+棟木) 久山作

たとえば、久山氏の大きく口を開けたカバ。体長3.5メートル、高さ1.7メートル。堂々たる存在感に圧倒されるこの作品は、重ねた段ボールをチェーンソーで削ってつくられている。ほかの作品も、公害・温暖化など自然破壊が進むなか、自然の営みが無限にくり返されることを願って、ナラガシやマツなど隅に追いやられた廃材や古材を使い、動物たちをいとおしみながらカービング(彫刻)されている。その作風は「ワイルド」だ。
▼「ゲート イン サラブレッド」 2400×3600 樹脂 西平作

いっぽう、西平氏による漆黒の馬。高さ2.4メートル、幅3.6メートル。「ゲート イン サラブレッド」と名づけられた作品は、樹脂で精密に再現されている。今にも駆け出しそうな、本物と見紛う迫力がある。生きものたちと真摯に向かいあい、長時間かけ観察し、資料に基づいてつくられている。そのスタイルを言葉にすれば「知悉」(ちしつ)だ。
▼チータ (ナラガシ) 久山作 ※地上を最も速く走ることができる動物

しかし、2人と話をしてみたら、作品から想像する人柄とはまったく逆。「ワイルド」の久山氏はシャイで朴とつ。「知悉」の西平氏は雄弁な情熱家。作家と作品の「柄」が一致していない。そのギャップが面白いと思ったが、考えてみれば、冒険小説家は得てして寡黙で、ミステリ作家は饒舌なものだ。表現する人と表現されたモノの関係って、深いなあ。
さて、「生きもの天国」は実に楽しかった。何より自由だ。作品に触れるだけでなく、動かせるし、作品によっては乗ることができる。このとおり写真撮影もOKで、そのうえカバや犬に乗った来場者を制作者本人が記念撮影してくれるのにはビックリ。
▼ワニ (ナラガシ) 久山作 ※アリゲーター科かな?

ワニのような猛獣やチーターのように個体数が少ない動物は、至近距離で観察できないぶん、一種の憧れがあるものだ。馬やカバにしても接しかたを間違えれば命を落としかねない。そんな生きものたちに触ったり、乗ったり、抱きしめたりできる体験は、ただ単純にうれしくて、気分がよい。馬の胴体の下に寝そべって見上げた光景は「目からウロコ」だった。


そのシルエットはみごとなまでの流線形。また、原寸大のコーガンを触ってみると
陸上競技のホーガンと同じ大きさ。馬はココまで馬並みなのかと妙に納得。
▼「フューチャー シープ」 Ⅰ~Ⅲ 樹脂 西平作 ※御幸毛織からの依頼

親子連れも多かった。普段は動物園やテレビで離れて見ているだけの動物に触れるし、乗ることもできる。子どもたち以上に、親のほうが嬉々としている姿が目立った。うん、それもよく分かる。ロフトのように設えられた階上から展示フロアを見下ろす。テレビやコミックを通じて動物たちに親しんできた世代としては、久山フロアはテレビ番組『野生の王国』を、西平フロアは手塚治虫の『W3』(ワンダースリー)や『ジャングル大帝』を思い出した。


素材感から表情まで「造形」の魅力をじっくり楽しめる。ぬいぐるみやフィギュアとは違って、等身大だからこそ、そして1人の人間が精魂こめてつくった生きものだからこそ伝わってくる、命の輝きを感じることができる。

命の輝き、そして命を輝かせているものを、正面からとらえようとする2人の姿勢は感動的だし、正真正銘、一生懸命だ。「ものをつくる」ことに一生、命を懸けている。費やされた時間とエネルギーをたっぷりと内包した作品たちと出合えた、この喜び。
常設にしてほしいと思うほど楽しい展覧会だった。
by kzofigo | 2008-04-30 00:06 | アート姉ちゃん























