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4/29 この30年で一番よく聴いた曲

FMをつけっぱなしにしてうたた寝していた俺はスピーカーから突然に飛び出してきたパンクとロカビリーをミキサーにかけたようなギターのイントロに眠りから叩き起こされギター8小節のあとボディーブロードスドス打ち込んでくるリズム隊の参加で完全に覚醒し17小節目からはじまったヴォーカルはオレンジ・シャーベットのように甘くて切なくて一気に俺の感覚は前のめりでその曲が終わるまで身動きひとつできなかったし官能的にショックだった。

その演奏はスタジオライブで司会の元スパイダース井上たかゆきはバンドは3人組でみんな上半身ハダカで皮膚にはイカしたタトゥーありと言いそれからついにバンド名を告げた。


ブランキー・ジェット・シティー


ああなんて格好いいネーミングなんだ。一発でクレイジーになった俺はFMでプレイしてた「冬のセーター」手がかりにレコード屋に飛び込みデビューアルバム『Red Guitar And The Truth』と2枚目『BANG!』発見し『BANG!』の中に「冬のセーター」発見し2枚とも買って帰ってそれからというものCDプレイヤーはブランキーに独占されハートをわしづかみにされっぱなしさ。

ギター&ヴォーカル浅井ベンジー健一/ベース照井トシユキ/ドラムス中村達也のスリーピースバンドなんだぜ。3Pバンドといえばどんなグループを思い出すんだい? PPM?(何世紀の人間なんだ!) クリーム?(イエーイ!) ELP?(ブーーー!) ポリス?(イエーイ!) ピンククラウドことジョニー・ルイス&チャー?(カモーン!) ミッシェル・ガン・エレファント?(不足!) トライセラトプス?(軟弱!) とにかくブランキーを聴いてみなよ、こんな気持ちいい3Pプレイはないんだから。


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2枚目にプロデュース土屋昌巳のクレジット見つけ記憶中枢は近過去へフラッシュバック。あのイカ天末期のキングだこいつらはと気づいたがそんなことはもうどうでもよくてニューアルバムのリリースデーを待ちわびる蜜月人生のスタート。 そして3枚目。最高傑作アルバム『C.B.Jim』で運命の曲に出会う。「PUNKY BAD HIP」「D.I.J.のピストル」「死神のサングラス」「3104丁目のDANCE HALLに足を向けろ」どうだいタイトルだけでもクールでたまんないナンバーがつづきそしてついに12曲目「悪いひとたち」。

魂がブルブル震え脳天にバキーンと強烈な弾丸を撃ち込まれたのさ。こんな激情はジョンの「MOTHER」以来だぜ。侵犯・殺戮・勃興・退廃・慈悲を1曲にぶち込んだこんな曲はJAP-ROCKのこれまでのどの時代のどこを探しても見あたりっこなーい。 だってリリースされて以来どの放送局もビビッてオンエアできないんだからさ。

ただ雑誌メディアだけが騒然としまくってロッキンオンジャパンには「全面闘争」の文字が躍ってて70年安保の安田講堂が脳裏から蘇って造反有理だぜと俺をけしかけるのさ。 だから言わせてもらおう。ハッキリ言って「悪いひとたち」はJAP-ROCKの歴史にギラッギラに輝く金字塔に決定!


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そのころ1994年2月もうじきオヤジになろうとしていた俺はカミサンが妊娠8か月で切迫早産になり入院してベビーは女とわかっていてカミサンとベビーの無事を祈ったんだよ。わかるかいこんな気持ち。俺にしても初めてだったさ家族のために祈るなんて。俺は不安だったんだよ。

だからカミサンが入院してた21日間というもの毎日毎日毎日毎日「悪いひとたち」を聴いて聴いて聴いて聴きまくったんだ。ナーバスになっちまった俺に向かってベンジーのヴォーカルが「OK,大丈夫さ」とピースマーク付きのメッセージを送ってくれたんだ。曲の最後にくり返されるこのリフレインが俺の胸をザワつかせているノイズをヴォリュームダウンしてくれたんだ。


きっとかわいい女の子だから
きっとかわいい女の子だから
きっとかわいい女の子だから
きっとかわいい女の子だから
きっとかわいい女の子だから・・・・・・


3月25日午後7時30分ベビーは無事に生まれた。カミサンも元気だった。「悪いひとたち」はあのころの俺の日々にはなくてはならないものだったけれどいまでは俺の人生になくてはならないものになった。『C.B.Jim』の12曲目「悪いひとたち」は自主規制で歌詞が一部カットされているからできれば『THE SIX』に収められている完全ヴァージョンで聴いてくれるかい。

ブランキー・ジェット・シティーは徹頭徹尾レッドゾーンでぶっ飛ばしドキドキするようなイカした10年間とアルバム『LIVE!』『METAL MOON』『幸せの鐘が鳴り響き僕はただ悲しいふりをする』『SKUNK』『LOVE FLASH FEVER』『国境線上の蟻』『ロメオの心臓』『HARLEM JETS』を置き土産に西暦2000年ジャストにジム・ジャームッシュ「ダウン・バイ・ロウ」のラストシーンみたいに行き先のわからぬY字路で浅井・照井・中村の3人はコイントスで選びすすみはじめたんだ。別々のおのれ道を。


バイバイ ブランキー・ジェット・シティー








「気をつけなよ。どこで自己に出会うか、わかんないぜ」





by kzofigo | 2019-04-29 22:02 | ミュージック・ブック