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4/28 ツーといえばクー

今月4日、カルト映画の金字塔『不思議惑星キン・ザ・ザ』などで知られるロシアの巨匠、ゲオルギー・ダネリヤ監督が89歳で死去した。ここでは彼の代表作のレビューを記し、その死を悼み、遠くで汽笛を聞きながら、大していいことがなかった平成にオサラバしたい。


『不思議惑星キン・ザ・ザ』(ソビエト連邦・1986年発表)

冬のモスクワ。マシコフは街頭でバイオリンを抱えた青年ゲデバンに「あそこに自分を異星人だと言う男がいる」と声を掛けられ、その怪しい男と言葉を交してしまう。自称異星人はこの星の座標を尋ねるが、マシコフは男の言葉を聞き入れず、手に持っていた「空間移動装置」を押してしまう。

その瞬間、マシコフとゲデバンは砂漠のど真ん中にワープ。仕方なく歩き出す2人の前に釣鐘型の宇宙船が飛来し、中から異星人ウエフとビーが現われた・・・・・・ここまでで約10分。あとの120分は、地球人2人の帰還劇が広大な砂漠の中で展開される。


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といっても、大仰なスペクタクルもサスペンスもパニックも、この映画には存在しない。ストーリーは、ただ予定調和を完全に無視した独特のテンポと間合いで、面白おかしく、調子はずれに進んでいく。そのまったり加減が実に心地いいのだ。

マッチが通貨のように重要な取引材料。あらゆる会話が「クー」のひと言で済まされる異星人同士の間抜けなあいさつ。ステテコの色で決まる身分。死ぬ直前の息をパッケージしたお墓。あらゆるものが金属製でオブジェのような建物や小道具などなど、よくもまあ摩訶不思議な設定を考えたものだ。





敵か味方かよく分からない、太っちょウエフとのっぽのビー。このどこか憎めない異星人コンビの演技が絶妙。それもそのはず、この2人、70年代に人民芸術家として表彰されたロシア演劇界の重鎮なのだ。

果たしてマシコフとゲデバンは無事、地球に帰り着けるのか。旧ソ連版「おもしろうて、やがて哀しき」ドラマ。観終えるころ、キン・ザ・ザ星雲に親しみを覚えるようになり、「クー」と思わず口にしていることを約束しよう。




by kzofigo | 2019-04-28 22:38 | ムービービーム