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スウェーデン・リレー

オセラ57号で紹介した【スウェーデン放送合唱団 倉敷公演】を聴きに、市民会館へ行って来た。


自分で書いた文章を引用してもいいんよう。

合唱界のベルリン・フィル。

公演のたび、驚嘆と称賛の嵐に包まれる、スウェーデン放送合唱団。かすかな弱音から巨大に広がるユニゾンまで、オーロラのように鮮やかに重なりあうハーモニーは、コーラスの概念を覆すほどの衝撃だ。合唱大国・エストニアの巨匠トヌ・カリユステらの指導で、欧米各地を揺るがす存在となった伝統は、5年前から首席指揮者に就いたオランダの俊英ペーター・ダイクストラに引き継がれた。声を合わせ、息を合わせ、心を合わせて生まれる驚異の音楽空間。ラフマニノフ『晩祷(ばんとう)』より抜粋、ヒルボルイ『モウヲオアエエユイユエアオウム(16声部の混声合唱のための)』ほか、「奇跡のア・カペラ」の響きを全身で受け止めよう。


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前日にたまたまDVDで『ドラゴン・タトゥーの女』を観て、当日未明に眠くて見られなかったけど、
サッカー強化試合「スウェーデン 0 × 1 なでしこジャパン」があって、そして「スウェーデン放送合唱団」と、
まるでスウェーデン・リレーのような流れじゃないか。

熱帯低気圧が梅雨前線を刺激した雨が激しく降り続き、客足が心配だったけど、7割方の入りでほっと一安心。ア・カペラ・コーラスだけのステージ。眠くなるんじゃないかと思ったけど杞憂だった。席は2階最前列のセンターからちょっと右寄り。残響に優れたホールのほぼベストサウンドを享受できる好位置に恵まれた。

スウェーデン放送合唱団の演奏会は、「全編ア・カペラ、つまり人の声のみで、互いに共振し、時に固まりとなり、流れ、そうしてストーリーと背景を縦横に紡いでゆく。楽器が音程やリズムを固定することがないため、即興的なふくらみも生じる」。

「森林浴のように豊かな倍音の世界にひたりつつ、(下のような)大作曲家たちの自由な精神の飛翔を、壮大な声のタペストリーのなかに(~プログラムより)」見つけ出せる素晴らしいものだった。


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とくに、ヒルボルイ『モウヲオアエエユイユエアオウム』(題名も歌詞も意味なし)は、16声部に分けられた、ソプラノ8人・アルト8人・アルトラパン1台・テナー8人・バス9台・・・・もとへ、ソプラノ8人・アルト8人・テナー8人・バス9人の計33人、つまり2人1組がワンパートとなって、母音だけでさまざまな響きを多層的に、連続的に織り成していく、繊細かつ圧倒的なパフォーマンス。

不協和音をも美しく響かせる和声は、かすかなピアニッシモから壮大なフォルテッシモまで一糸乱れず、スカンジナビアのピンと張り詰めた極寒的な厳しさをコアに持ちながら、空間全体を音のドームで包み込むような豊かさに満ち満ちていた。

キューブリックの『2001年宇宙の旅』で終盤に宇宙飛行士が異空間を通過するシーンがあり、確か不協和音を駆使したコーラスが使われていたけど、あの場面にぴったりの曲だなあと思った。この曲と協演する映像、あるいはこの曲のPVを創りたいっていう衝動に駆られた。


▼スウェーデン放送合唱団のリハーサル風景
映画『プラトーン』でお馴染みのサミュエル・バーバー『弦楽のためのアダージョ』


Swedish Radio Choir during rehearsal. Stokholm, february 2010.
Peter Dijkstra, Conductor.


【特報!!】

8月10日(金)午前6:00~6:55のNHK-BSプレミアム「クラシック倶楽部」
6月19日(火)に東京オペラシティコンサートホールで行なわれた
「スウェーデン放送合唱団」の公演が放送されるよ。早朝だけど必見!

長身で手足がめちゃ長いペーター・ダイクストラの「美しい指揮」ぶりも見ものだよ。

by kzofigo | 2012-06-21 23:18 | ミュージック・ブック