ガンバらないもんね
仕事で神経をすり減らすサラリーマンの夫、
通称ツレ(堺雅人)が、ある日突然、心因性のうつ病と診断される。
ツレの変調に無頓着だった漫画家の妻・晴子(宮﨑あおい)は、
反省するいっぽう、原因は会社にあるとツレに退職を迫る。
会社を辞め、自信喪失に陥ったツレを、さまざまな症状が襲い・・・。
原作は、細川貂々(ほそかわてんてん)のコミックエッセイ。
うつ病を患った夫との二人三脚の闘病記を綴ったベストセラー。
亡くなった悪友OTが会社から独立するときに軽いうつになり買い、
それをうつ病のベテランである僕が譲り受け、
仕事上のストレスでまさかのうつ病を患った同級生Nへ、そしてKBへと渡り、
回り回って回って回って、円ひろし的に、大変お世話になった一冊だ。
その人気作を、『半落ち』『夕凪の街 桜の国』の佐々部清監督が誠実に映画化した。
自身の周辺にもうつ病になった知り合いが何人もいるという佐々部監督が、
4年をかけて映画化にこぎつけた意欲作だ。
深刻になりがちなテーマを、シリアスに偏らず、ユーモアを交えながら、
原作同様ほのぼのと描いているのがいい。
とにかく、堺雅人と宮﨑あおいがうまい。
神経質で気分の振幅が激しいツレをコミカルな味つけで演じる堺雅人はみごと。
辛い立場でありながら、うつ病に苦しむ繊細な夫をゆったりと見守る宮﨑あおいは天使に見えた。
この主演二人が、今どきの夫婦を抜群のコンビネーションで演じている。
加えて、大杉漣や余貴美子、梅沢富美男、イグアナのイグなど脇役陣に味がある。
彼らの存在が、うつ病には家族や周囲の人々の理解が何よりも大切であることを、しっかりと伝えている。
夫に収入がなくなったことで、晴子は漫画に真剣に取り組むようになり、
結果としてベストセラーを生み出すことにつながる。
単なる夫の闘病記ではなく、
絶妙な間合いで精神的に夫をサポートする妻の物語でもある点でも、本作は優れている。
ツレとツレのうつ病に向きあうことで、晴子もまた成長していく姿は健気で感動的だ。
随所にちりばめられた、うつ病克服のヒントを見逃すことなかれと、
自分のうつ病が原因で離婚に至った僕は切に思う。
美術スタッフとスタイリストのGood job!も見逃すことなかれ。
人が人を想う温かさに包まれた秀作。
おすすめ度★★★★☆
by kzofigo | 2012-05-28 18:31 | ムービービーム