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半年遅れの【2011映画ベスト&ワースト10】

本数は、DVDが一昨年の94本から132本に微増。
映画館での鑑賞が『第9地区』のたった1本から、『冷たい熱帯魚』『プリンセス・トヨトミ』
『ブラック・スワン』『アジャストメント』『SUPER 8』の5倍に!

137本と、さみしいサンプル数ながら、今年も選んでみました、ベスト&ワースト10。
今年も、はや、半分を過ぎようとしている今頃になっての発表に果たして意味があるのか!?


【ベストテン】

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01.図鑑に載ってない虫(製作国:日本/公開年:2007年/監督:三木 聡)

いつもより3割増しの「あり得ない」設定も、寄り道ばかりしているストーリー展開も、随所に散りばめられた下ネタやダジャレ中心ギャグも、独特の色彩センスによる過剰にレトロでド派手な衣装や大量の大道具・小道具も、心底楽しめてしまう、三木聡ワールド炸裂の真骨頂ムービー。「ズカチュー」最高!!

02.ブラック・スワン(米国/2011年/ダーレン・アロノフスキー)

映画はずっと舞っている。主人公ニナ、ナタリー・ポートマンの感情に身を寄せながら。食い入るように見つめ、身じろぎひとつできず、この作品を評するこれ以上ないひと言をナタリー・ポートマン自身がラストシーンで発したあと、本編終幕のホワイトアウトでは身震いがした。


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03.愛する人(米国・スペイン/2011年/ロドリゴ・ガルシア)

生まれた日に養女となり、37年間、別々に生きてきた娘と母が、再会を果たそうとするまでの心の有り様を丹念に描いて秀逸。主人公2人とは無関係の、養女を望む別の母娘も登場する。この2組がラストでひとつに繋がるみごとな展開には、言葉にできない感情のあやに激しく揺さぶられる。

04.ミスター・ノーバディ(仏・独・カナダ・ベルギー/2011年/ジャコ・ヴァン・ドルマル)

人間が科学の力で不死を手に入れていた、2092年。突然目覚めた108歳のニモが選択する12通りの人生を、手抜かりなしに描き切る。パラレルに展開される12の物語を破綻させることなくまとめ上げた緻密な構成と、アートに優れた映像美に脱帽。映画史上初めて描いたビッグバンの逆転現象「ビッグクランチ」に興奮。

05.キラー・インサイド・ミー(米国・スウェーデン・英国・カナダ/2011年/マイケル・ウィンターボトム )

非の打ちどころのない青年が内に秘めた殺意を爆発させていく衝動と、欲望に駆られて破滅へと向かう姿を描く。幸福を切に願い追い求めるいっぽうで、ときに破滅的な衝動に駆られてしまう人間という矛盾を抱えた生き物の本質そのものに、クールなアプローチで迫った衝撃作。

06.クレイジーズ(米国/2010年/ブレック・アイズナー)

休日ともなればみんなが野球を楽しみ、ほとんどが顔なじみ・・・・昨日まで穏やかに談笑していた隣人が、突如として凶暴な「クレイジーズ」に変身し、襲いかかって来る。住み慣れた町中に「顔見知りの通り魔殺人者」が次々と現われるという、まさに究極の不条理サスペンス。

07.ザ・タウン(米国/2011年/ベン・アフレック)

監督・脚本・主演をこなすベン・アフレックの演出は巧みで、宿命から抜け出そうともがく青年の純愛と、クライム・アクションの絡みが絶妙。ジョン・セイルズの『希望の街』(1991年)を彷彿とさせるほど、希望と絶望の狭間で自らの運命と闘う登場人物たちの人物像を丁寧に掘り下げた人間ドラマ。


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08.メタルヘッド(米国/2011年/スペンサー・サッサー)

母親を亡くし、へこみっ放しの少年TJと父親。ジョセフ・ゴードン=レヴィット演じる米国の田舎町にいそうなロクデナシ兄ちゃんが、ナタリー・ポートマンの愚図で間抜けなレジ打ち姉ちゃんをTJから奪いつつも、デスメタルの「基本的にこの世は地獄」の精神に則り、2人を救済するまさかの感動作。拾いものの1本。

09.半分の月がのぼる空(日本/2010年/深川栄洋)

池松壮亮と忽那汐里の切ない青春映画が、2人と大泉洋の人生が交差することで、まったく異なる表情を見せ始め、号泣必至のクライマックスへ。主人公たちへの共感度を高める、素晴らしいトリックあり。1本の映画のなかで、新人・忽那汐里が女優として成長していく姿に出会える貴重な作品。

10.ミッドナイト・ミート・トレイン(米国/発売:2011年/北村龍平)

クライヴ・バーカーの原作をもとにした、北村龍平監督のハリウッドデビュー作。真夜中の地下鉄で、乗客を肉屋が肉たたきハンマーを振り回して殴り殺す、スラッシャー映画。体の一部が飛び散るさまを素早いカメラワークで撮るなど、映像の美しさが際立つ、非常にスタイリッシュなホラー。


ベストとワーストが逆のような気がするあなた、それ、気のせいですから。


【ワーストテン】

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01.キャタピラー(日本/2010年/若松孝二)

昭和20年8月15日・・・・権力が力を失ったときに何が起きるかを通じて、暴力と支配欲、そして自尊心の逆転するさま、人間の業の理不尽さをもっと官能的に描いてほしかった。モチーフである江戸川乱歩の短編小説『芋虫』にも、丸尾末広が描いた漫画版『芋虫』にも表現の濃密さで負けてちゃダメでしょ。

02.告白(日本/2010年/中島哲也)

少年Aの母性への渇望、少年Bの母親の溺愛、少女の全能願望、少年たちの殺人の動機、主人公の復讐劇・・・・どれもが類型的で、まったく感情を揺さぶられない。映画の核心である復讐劇の描き方の浅さを映像効果が覆い隠している。登場人物たちのモノローグが物語の説明になっていることが致命的な失敗だ。

03.マザー・ウォーター(日本/2010年/松本佳奈)

これは架空の映画である。松本佳奈という新人監督も架空の人かも知れない。中身をカラッポにして、観る人が自分なりに意味づけできる余地を全面的に残してくれた親切な作品だ。パセリ商会も粋なことをやってくれる。京都である必要がどこにもありまへんえ~


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04.FLOWERS -フラワーズ-(日本/2010年/小泉徳宏)

時代それぞれの映画を再現した映像技術、当時流行のメイク、スタイリング、美術に目が行ってしまう。アートディレクターとして大貫卓也氏がかかわったことで、長編CMになってしまった。三世代にわたる女性たちの生き方を紡いだ物語が胸に届かないのは、人情が描けてないから。そこが『三丁目の夕日』との差。

05.ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う(日本/2010年/石井 隆)

石井隆監督は17年も間を空けてこんな続編を作るべきじゃなかった。前作や『GONIN』(1995)などで魅せてくれた、ヒリヒリするような緊迫感でこことは別の世界へ引きずり込む、虚構の魔力がどこにもないじゃないか。映画が現実に負けている。めくるめく嘘の塊と高まりで現実を凌駕できるのは園子温だけなのか。

06.乱暴と待機(日本/2010年/冨永昌敬)

『パビリオン山椒魚』(2006)が最悪で、『パンドラの匣』(2009)はまあまあだったけど、基本的にこの監督とは合わないや。滑稽な人間関係を描き出したいようなんだけど、作り手が面白がっているだけで、こっちは、ちっとも面白くない。こういうシチュエーションものは三谷幸喜に撮らせるべき。あ、彼なら舞台でやるか・・・


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07.ヤギと男と男と壁と(米国・英国/2010年/グラント・ヘスロヴ)

レスリー・ニールセン『裸の銃(ガン)を持つ男』やチャーリー・シーン『ホット・ショット』のようなコメディを期待してたんだけど、大ハズレ。豪華キャストがもったいない。「実在の超能力部隊」という好素材の料理にしくじって、上滑りの連続。ジョージ・クルーニーとユアン・マクレガーのキャリアが心配で、壁を通り抜けられない。

08.SAKI 鮮血のアーティスト(日本/2011年/横山智佐子)

何で借りたのと激しい後悔に苛まれる度、頂点。林家三平の嫁・国分佐智子のエロティック・スリラーという触れ込みに騙された。エロも中身も期待外れのC級映画。観るのは時間と金の無駄。監督は、編集スタッフでリドリー・スコット作品などに参加しているらしいが、その前に東映Vシネでヤクザを勉強しろっつーの!

09.富江 アンリミテッド(日本/2011年/井口昇)

演技下手、内容にも映像にも怖さがない。ラストの手の平返し的な展開も冷めている。一度殺された富江が分裂して、ゴミ箱のなかから、弁当箱に納まって、頭のない体として・・・・さまざまな姿で蘇える。富江ムカデ登場で、さらにダメの上塗り。ここまで酷いと、逆に笑えるもんだが、コメディにも成り得てないのが悲惨。

10.七瀬ふたたび(日本/2010年/小中和哉)

とにかく地味なSF映画だ。ゴレンジャーとか戦隊ものに毛が生えたような感じ。俳優たちの演技もパッとせず、みんなまとめてミスキャストの谷底へ突き落としたい衝動に駆られて困った。どんな映画でもベストを尽くそうとする平泉成がかわいそう。ヒロイン芦名星は、佇むだけで華のある女優になってほしい。

by kzofigo | 2012-06-07 01:50 | ムービービーム