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「高山ふとんシネマ」  高山なおみ:著 11/26

肩の力が抜けてほっとするエッセイ集。布団にくるまりながら読みたい一冊。

著者は1958年、静岡県生まれ。かつて吉祥寺にあった「諸国空想料理店KuuKuu」のシェフを経て料理家に。書籍や雑誌、テレビなどを活動の場とし、料理だけでなくレシピ本や日記、エッセイなども手がける文筆家としての顔も持つ。

この本は、幻冬舎のWEBマガジンにて、2009年4月から2011年1月まで連載していたものに書き下ろしを加え、1冊にまとめたもの。昔から眠ることが大好きで、本を読むのも布団のなかという著者が、観て、聴いて、感じた映画や音楽や本、そして夫であるスイセイこと発明家の落合郁雄氏ほか家族のことなどを、布団のなかから紡いだ36のエッセイで編まれている。


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『やかまし村の子どもたち』『マンハッタン』『すいか』といった、とびきりのお気に入りは「私の宝物」として紙質を変えて集められている。くり返し観て身に染み込んだ映画やドラマ。料理家らしく、そんな作品の劇中に出てくる料理を参考にしたレシピが添えられたものもある。

カジュアルな文体ながら、実に巧みな文章で、まるで料理のおいしさを伝えるように、うれしそうに綴っている。『2001年宇宙の旅』ですら、具だくさんのおでんをつついているようだ。それでいて、ちゃんと作品の本質を突いているから油断できない。根底には、日々、感受性を研ぎ澄まして生きている人の凄みがあるのだ。

高橋かおりによる、子どもの落書きのような味のあるイラストも、ほどよいスパイスになっている。肯定感にどっぷり浸りながら、心がポッと温かかくなる。じんわりとした読後感に包まれる、名エッセイ集だ。

◆幻冬舎 1365円

by kzofigo | 2011-11-26 22:33 | ミュージック・ブック