星新一氏 祝!生誕85周年

ノックの音がした。
ソファに腰かけてオリオンビールを飲みながら
岡山日日新聞の夕刊で「端午の節句」でもないのにカブトを折っていた私は
泊まっているホテルの部屋のドアを開けた。
倫子だった。

「んちゃ! よう来たのう」
「あー、ノド渇いておえんが。何か飲みてーわー」
「何飲むん?」
「そーじゃなー、ウォッカのママイ割り」
「おめーはロシアの岡山っ子か!」
「じゃって、おいしいんじゃも~ん、ママイ」
「ほれ」
「ありがと。グビ。ん? これ森永のマミーじゃろ!」
「おめーはオハヨー乳業の回しモンか!」
「それより、原田宗典の妹の原田マハが書いた『でーれーガールズ』読んだん? グビ」
「どんな本?」
「こんなん。グビ」

「外身じゃのーて中身を聞いとんじゃけど」
「1980年、岡山。夢見がちなマンガ少女だった鮎子。気が強いけどどこか陰のある美少女、武美。
30年ぶりに再会した二人のでーれー(=ものすごい)熱い絆の物語。グビ」
「コピペみたいなセリフじゃのう」
「で、読んだん?」
「岩井志麻子の『ぼっけえ、きょうてえ』なら読んでねーけど」
「バッカじゃないの!」
(下につづく)
◆

今日子さん。ようこそ。
略して今日こそ台風一過のような秋晴れだった。
空が高い。
仕事するのがもったいない天気だ。
自家用セスナを操縦してスカイダイビングにでも行きたくなった。
でも、自分で操縦して自分が飛び降りたらセスナは無人になってしまう。
あ、そうか。
副操縦士で宅麻伸に同乗してもらえばいいんだ。

ビール以外にもノンアルコール飲料が発売されている。
Asahiのカクテルシリーズを試してみた。
ジントニックはやっぱりアルコールが入ってないとジントニックとは言えまへんで。
炭酸のゆるいサイダーみたいだった。
先日はシャルドネを飲んでみたけど白ワインの味にはほど遠かった。
これならジンジャエールを飲んだほうがマシだと思った。
僕は下戸だけど20代の頃はワインクーラーならグラス一杯くらい飲めましたんや。
それでトニックやワインの味ならちょびっとは知ってるっちゅうわけ。
Suntory Saturday Waiting Bar AVANTIみたいな酒場で、
「ジェイク、いつもの」「はい。かしこまりました」ってやってみたいなあ。
◆
消防車が10台ほど飛んできそうな灼熱のキスを交わすと
欲望という名の弾丸列車のベルがけたたましく鳴り
倫子と私はベッドのなかで互いをむさぼりあった…というのはウソで
ウォッカのマミー割りを飲みすぎた倫子は酔いつぶれ
ベッドですやすやと寝息をたてている。
私は困惑した。
実をいうと私はカラダの均整がとれた金星人である。
見た目も生殖スタイルも地球人と変わらない。
違うのは宵の明星を見ると郷愁にかられヨダレが出てしまうことくらいだ。
地球人の涙は金星人にとってヨダレなのである。
だから『火垂の墓』を決して地球人と一緒には観ない。

地球よりも太陽に近い金星は太陽の活動活発化で温暖化どころではなく
もともと400度前後といわれる地表温度がさらに上昇し金星人は存亡の危機に瀕している。
そこで地球人の姿を借りて金星人のDNAを保存するために私たちが地球に送られた。
倫子と出会い恋愛関係になり今夜こそ私に託された任務を遂行するはずだった。
いま思いついたのだがこんな面倒くさい手順を踏まなくても地球人に卵子の提供を呼びかけ
人工授精すれば簡単に片づくことじゃないか。ま、いいか。
「うぎゃー!」
臓物をえぐるような奇声とともに倫子が飛び起きた。
「ど、どしたん!?」
「夢じゃったんかあ。よかった」
「どんな夢見たん?」
「あんなあ。あなたが実は金星人でヤバくなった金星人の種を保存するために私と寝るの」
体中にドッと吹き出しそうになった冷や汗を私は皮膚の裏側へリヴァースした。
「でね。男の赤ちゃんが生まれるの。でもその赤ちゃんは顔が彼にそっくりなの!」
「彼って?」
「いや! いや!! いやーーーっ!!!」
私は倫子に似た女優が主演の映画『パラノーマル・アクティビティ 第2章/TOKYO NIGHT』の女優より
怖がり方がでーれーと思った。
「怖がらんからゆーてみ。彼は誰なん?」
「……え…え、え」
えなりかずき!

by kzofigo | 2011-09-06 12:03 | ミュージック・ブック























