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8月の熱いムービー 最終回

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群馬県に住む19歳の大学生、ヒデこと秀成(成宮寛貴)。ある晩、父親が忘れた財布を取りに行った居酒屋の27歳の娘・額子(内田有紀)に出会い、誘われるまま童貞を奪われる。ヒデは年上の額子との情事に溺れる日々を送るが、額子はヒデを公園の木にペニスを露出させたまま縛りつけ、置き去りにして結婚してしまう。失意のなかで留年したヒデは、何とか卒業し県内の家電品量販店に就職。翔子(白石美帆)とつきあい始めるが、虚しさは募るばかり。気がつけば酒浸りの日々で、仕事も恋人も失い交通事故まで起こし、とうとうアルコール依存症に。その頃、額子も過酷な運命にひとり耐えていた。そして10年後、二人は再会する…。
(2010年12月18日公開/日本映画/金子修介監督) Watching Day 6/29

ジャケ写の気持ちよさそうな内田有紀の表情に釣られて観たけど、拾いもんの1本だった。芥川賞作家・絲山秋子が愛着をもって暮らす群馬県高崎市を舞台にした同名小説を原作に、『ガメラ』シリーズの金子修介監督が、心理描写が冴えわたる巧みな演出と、10年の歳月を実際の事件や出来事を背景に進めていくテンポのよいストーリー展開で映画化。

ちゃんとした婚約者がいてヒデとは遊びのつもりだった額子(がくこ)。額子に入れ込んで惚れ込んだ挙げ句にポイと捨てられたヒデ。その後、額子にある悲劇が訪れることで、別れはしたが、二人は傷だらけになった心を共有している。それを、額子を登場させず、堕ちていくヒデの姿を丹念に描写することで表わしているのが上手い。そのほうが、10年後の再会がただごとではなくなるもんね。


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母親(浅田美代子)や姉、額子の母(古手川祐子)、翔子、バイト先の料理屋の娘、ユキ(中村ゆり)など、ヒデを取り巻く女たちがみんなやさしい。男だって父親(小林隆)も親友(池内博之)も、料理屋のオヤジも会社の上司も、みんなヒデの味方。ああ、それなのにアル中になってしまう「ばかもの」よ! いっぽうの額子の哀しすぎる「ばかもの」ぶりは映画のキモなので自分で確かめてください。タイトルどおり「ばかもの」の話だけど、このばかさ加減は胸に沁みるし、金を払ってまで観る価値があると思うよ。

お気楽な学生が額子との別れをきっかけに奈落の底へ突き落とされ地獄を味わうヒデ役の成宮寛貴。そのリアルな変貌ぶりと鬼気迫る熱演は見事。見直しました。ぶっきらぼうな言葉や態度とは裏腹に繊細な女心を隠して不器用に生きる額子役の内田有紀。いい歳の取り方をして、いい女になったもんだ。今後の出演作が楽しみ。


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作品的には「そこまで」なんだろうけど、ヒデと額子のやりたがり度は凄いのに、いざコトに及ぶと演出の腰が引けるのはイカンなあ。個人的には、金子修介監督が日活ロマンポルノ時代に撮っていたような、もっと激しく求めあう濃厚なセックスシーンが欲しかった。

撮影が、幻想的な映像で魅せた『真幸くあらば』の釘宮慎治。絵がきれいです。でもねえ、決められた構図にクレーンを使って近づける、段取りがミエミエのカメラワークによるラストシーンは減点もの。それと、映像からはく離している音楽さえ馴染んでいたら満点だったかも。惜しい!
★★★★☆


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リー(ツァオ・チー)は1961年、中国・山東省で7人兄弟の6番目の息子として誕生する。江青の文化政策によって彼は11歳で親元を離れ、北京の舞踏学校でバレエの英才教育を受ける。時を経て、改革開放が実現していこうとするなか、やがてたくましい青年に成長したリーは、中国を訪れていたヒューストンのバレエ団の主任ベン (ブルース・グリーンウッド)の目に留まり、アメリカでのバレエ研修に参加することになるが…。
(2010年8月28日公開/オーストラリア映画/ブルース・ベレスフォード監督) W.D. 7/11

ヒューストン・バレエ団元プリンシパルで、バレエ界引退後は豪州に在住している中国人、リー・ツンシンのベストセラー自叙伝『毛沢東のバレエダンサー』を映画化。毛沢東政権下に、農村出身の少年がバレエダンサーとして成功し米国へ亡命する波瀾の半生を描く。監督は『ドライビング・ミス・デイジー』のブルース・ベレスフォード。主演を務めるのは、バーミンガム・ロイヤル・バレエのプリンシパルであるツァオ・チー。激動の時代を歩む主人公の人生の変遷とともに、その並外れた踊りにも息をのむ。この映画はアメリカのバレエ団に留学したリーが、アメリカで踊り続けたいと亡命する事件がメインになっている。芸術といえども政治と無関係ではすませられない中国という国の難しさを、情に流されることなく、もっと思いきった切り込み方で手加減なしに描いてくれたら完璧だった。
★★★★☆


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ストックホルム郊外で母親と暮らす12歳のオスカー(カーレ・ヘーデブラント)は、学校で同級生にいじめられていた。ある晩、彼はアパートの隣の部屋に引っ越して来たエリ(リーナ・レアンデション)という少女と出会う。ぼさぼさの黒髪に青白い顔、夜にしか姿を現わさない、謎に満ちた少女エリ。「君の友だちにはなれない」といきなり告げるエリだったが、毎晩のように中庭で顔を合わせ、寝室の壁越しにモールス信号を送り合うようになる。その頃、町では猟奇的な殺人事件が起きていた…。
(2010年7月10日公開/スウェーデン映画/トーマス・アルフレッドソン監督) W.D. 7/26

スウェーデンのスティーヴン・キングことヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストのベストセラー小説『モールス』を、彼自身の脚本で映画化した、残酷だけど儚くも美しい愛の物語。そのリリカルな映像世界で、トライベッカ映画祭グランプリをはじめ世界各国で60もの映画賞に輝いている。孤独な少年がヴァンパイアの少女と初めての恋に落ち、戸惑いながらもその現実を受け入れていく過程を、詩情豊かに綴る。


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本作の核となるオスカーとエリを演じるカーレとリーナは無名の子役たち。オスカーとエリが共有する孤独と渇望を表現した、二人のピュアな演技が魅力的だ。古今東西、ヴァンパイア映画は数多くあるが、これほど鮮烈でユニークな作品にはちょっとお目にかかれない。吸い込まれそうな大きな瞳が印象的なリーナ・レアンデションは、撮影当時12歳とは思えないほどの色気でワイルドなヴァンパイアを演じ切る。凄惨だけれど胸のすくクライマックス、わくわくと希望すら感じさせるラストシーンまで目が離せない。
★★★★☆

by kzofigo | 2011-08-18 13:08 | ムービービーム