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8月の熱いムービー [5]

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将軍の腹違いの弟という立場に甘んじ、悪行の限りを尽くす明石藩主・松平斉韶(なりつぐ)。幕府の老中(平幹二朗)は、この暴君が国の要職に就く前にひそかに闇に葬るよう、御目付役・島田新左衛門(役所広司)に密命を下す。斉韶の凶行の数々を知った新左衛門は、命がけで大義を果たすことを決意。信頼が置けて腕の立つ刺客を集め、斉韶が参勤交代で江戸から明石へ帰国する道中を狙うことに。わずかな手勢で300人を超える軍勢を迎え討つため、新左衛門たちは落合宿を買収。大掛かりな罠を仕掛け、斉韶ら明石藩の一行を待ち受ける…。
(2010年9月25日公開/日本・英国映画/三池崇史監督) Watching Day 6/10

非常に面白くスカッとした。141分の長尺をまったく感じさせない、いかにもクエンティン・タランティーノが熱狂しそうな、スピード感あふれる本格アクション時代劇。天願大介の脚色が素晴らしい。新左衛門の甥である島田新六郎(山田孝之)を事の次第を見届ける語り部的なポジションに据え、島田新左衛門と鬼頭半兵衛(市村正親)のアダルトペア、島田新六郎と山の民・木賀小弥太(伊勢谷友介)のヤングペアの対比を軸に、行き場を失い閉塞感を持った幕末の侍の生きざまに対して、同じく閉塞した時代に生きる現代人に共感を抱かせる内容が秀逸だ。

暴君・斉韶の極悪非道ぶり【序】、刺客を集め落合宿に至るまで【破】、50分にわたる激闘【急】…と「序・破・急」もそれぞれ念入りに描かれている。また、刺客の正当性を強調するために、(ほんの一例だが)手足を切られ舌まで抜かれた女を出すなど、斉韶がいかに傍若無人であったかを、容赦なしに描いたショッキングなエログロシーンは三池崇史監督ならでは。


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キャスト的には、斉韶役・稲垣吾郎ちゃんの暴君ぶりが意外にも適役で驚いた。吹石一恵の対照的な「芸妓お艶」と「山の女ウパシ」の一人二役が効いている。往年の時代劇ファンを取り込むために太秦大御所的な芝居と太刀さばきの倉永左平太役・松方弘樹を配役したのも用意周到。しかし、何と言っても、『七人の侍』の菊千代的な役割を担う山の民、巨根絶倫の不死身男、小弥太(伊勢谷友介)の人間離れした暴れん坊ぶりが痛快だ。三州屋徳兵衛(岸部一徳)を一突きする堀釜シーンは圧巻!

役所広司、山田孝之、伊勢谷友介、沢村一樹、古田新太、高岡蒼甫、六角精児、伊原剛志、松方弘樹、吹石一恵、谷村美月、内野聖陽、光石研、岸部一徳、平幹二朗、九代目松本幸四郎、稲垣吾郎、市村正親……この出演陣を見ているだけで満腹感を覚える。そして、襖や欄間をはじめ、美術がいい仕事をしている。時代劇全盛期に戻ったような豪華さで、映画のクオリティを大いに高めていた。

久々に時代劇の興奮を堪能した。

エンドロールに神楽坂恵の名前があったけど、いったいどこに出ていたんだ???
★★★★★


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かつては名を馳せたCIAエージェントのフランクだが、いまは引退し、田舎町でのんびり暮らしていた。そんな彼の唯一の楽しみは、用事を装い年金課の女性サラに電話をかけること。ある夜、フランクはコマンド部隊に襲われる。次はサラの身が危ないと感じたフランクはサラを連れ、かつての上司で今は老人介護施設で暮らすジョーを訪ねた。襲撃者たちはCIAと関わりあいがあることがわかり、フランクは引退したかつての仲間たちと反撃に出る。
(2011年1月29日公開/アメリカ映画/ロベルト・シュヴェンケ監督) W.D. 6/26

ブルース・ウィリス主演の、これぞハリウッドというくらい、実にハリウッドらしいスパイ・アクション映画。同名グラフィックノベルの実写映画化だけに、コミカルな要素が強い娯楽作。原題の「RED」からして「リタイヤード・エクストリーム・デンジャラス」=「超危険退職者」の略なのだ。かつてCIAで鳴らした中高年の凄腕スパイたちが活躍する作品だ。


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まず、ブルース・ウィリス(俳優の実年齢:55歳)演じるエージェント、フランクが、ウィリスが演じてきた役柄のパロディのように最初から「超強い」という設定。そしてフランクの脇を固めているジョー(モーガン・フリーマン:73歳)やマービン(ジョン・マルコヴィッチ:57歳)たちの、遊び心たっぷりの演技が楽しい。なかでも、ヴィクトリア(ヘレン・ミレン:65歳)が豪快に銃をぶっ放すシーンは爽快だ(4人の平均年齢63歳)。

中高年が活躍する作品だけあって、スピードにあふれたアクションシーンは少なく、全体としてまったりしている。でも、それがこの映画の魅力。経験や駆け引きを臨機応変に駆使した作戦と、不意を突く奇襲で敵を一蹴するシーンが満載。フランクとサラ(メアリー=ルイーズ・パーカー)、ヴィクトリアとKGB諜報員イワン(ブライアン・コックス)のロマンスも見どころ。全編に流れるサウンドトラックもロケーションごとに選曲され、心地よい洒落たBGMになっている。大人のデートムービーとしてぴったりの1本だ。(チョイ役で出てくるリチャード・ドレイファスをお見逃しなく!)
★★★★☆

by kzofigo | 2011-08-08 12:37 | ムービービーム