8月の熱いムービー [3]
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かつては栄華を誇った大人のためのショークラブ「バーレスク」も、いまや客足が衰え経営難に陥っていた。伝説のスターにして現オーナーのテス(シェール)は、舞台監督のショーン(スタンリー・トゥッチ)とともに再建に尽力するが、すべては新たなスターの誕生にかかっていた。そんなとき、アイオワの田舎町からスターを夢見て単身ロサンゼルスへとやって来た少女、アリ(クリスティーナ・アギレラ)。彼女は偶然目にした「バーレスク」の華麗なショーに心奪われる。そして、どうにかウェイトレスとして雇ってもらい、ステージに立つチャンスを狙う。やがて、その歌唱力とダンスの才能がテスにも認められ、ついにスターへの階段を上り始めるアリだったが…。
(2010年12月18日公開/アメリカ映画/スティーヴン・アンティン監督) Watching Day 4/30
スターを夢見るヒロインのサクセス・ストーリーと、ショークラブの再生をめざす人々が織り成す人間模様を、華麗なステージ・パフォーマンスとともに描いた、ミュージカルというよりショーと呼ぶべきエンタテインメント。映画初出演作のクリスティーナ・アギレラ。ワンフレーズ歌っただけで観客の心を奪ってしまう、その歌唱力が圧倒的だ。ミュージカル映画としては史上最高のお金を費やして製作されただけあって、「バーレスク」のステージでくり広げられる歌と踊りは妖艶で圧巻。
しかし、映画として観た場合のいささか凡庸な感じは何だろう。きっとアリの歌や踊りに対する情熱、テスの「バーレスク」を守ろうとする思い、テスが間借りするバーテンダー・ジャックの夢や恋愛へのひたむきさ…すべてがまっすぐでまっとう過ぎるんだと思う。ストーリーにもう少し陰影や起伏、抑揚があればよかった。『シカゴ』や『NINE』を観てないんで大きなことは言えないが、『キャバレー』『スター誕生』('76年版)『フェーム』『ドリーム・ガールズ』などのほうが見ごたえがあったような気がする。
ゴールデングローブでオリジナル楽曲賞を獲った『YOU HAVEN’T SEEN LAST OF ME』を、テスが誰もいなくなった舞台でひとりしみじみと歌うシーンは名演で、必見。
★★★★☆
※『スター誕生』は、ビヨンセ主演、クリント・イーストウッド監督でリメイクが決定したね。
クリス・クリストファーソンがやった役は誰になるんだろう。楽しみだ。
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僕はアニメ映画が苦手だ。これは映画賞にけっこうタイトルが挙がっていたので観た。
罪を犯して成仏できない魂の「ぼく」に天使らしき存在のプラプラが話しかけた。「抽選に当たりました!」。自分が何の罪を犯したかを思い出せば、もう一度現世に戻ることができるという。こうして、自殺したばかりの14歳の少年「小林真(まこと)」の体に入り込み、「小林真」として生きることになる。見知らぬ他人の家に「ホームステイ」しているという気楽さから、不倫していた母親や、人がいいだけが取り柄の父親、自分を見下した成績優秀の兄にふてくされたような態度をとり、反発するが、やがてある真実に気づかされる…。
(2010年8月21日公開/日本映画/原恵一監督) W.D. 5/1
直木賞作家・森絵都の原作は(まったく記憶にないが)かつて中原俊監督で実写化されている。このアニメ映画化では、『クレヨンしんちゃん アッパレ!戦国大合戦』『河童のクゥと夏休み』など、ごく普通の日常を丹念に描くことに長けた原恵一監督らしく、天国や輪廻という部分を除けば、どこにでもある家庭と学校生活のなか、思春期にある少年の揺れ動く心情が、繊細なタッチでスケッチされていく。
「ぼく」は、幸せそうに見えた家庭や、クラスメートの本当の姿を知り、これでは絶望して死にたくなるのも無理はないと思う。そう思ったところで、早乙女くんという友達ができる。彼との関係が「ぼく」をどんどんポジティブに変えていく。一緒に廃線になった電車の路線を訪ねたり、激安の靴屋に入るエピソードなど、何気ないのにグッとくる。違うスタンスから「今」を見る視点を得た「ぼく」は、やがて人は一色ではなく、何通りもの色を持つ存在でいいんだと気づいていく。
最後にプラプラが明かす「ぼく」の秘密やプラプラ自身の正体には、切ない驚きに包まれるだろう。
それにしても、ソング。↓こ↓れ↓は欲張りすぎだし、それぞれほかの曲に対して失礼じゃ!
●イメージソング『僕が僕であるために』(作詞・作曲:尾崎豊/編曲:Akihisa Matzura/歌:miwa)
●エンディングテーマ『青空』(作詞・作曲:真島昌利/編曲:Akihisa Matzura/歌:miwa)
●挿入歌『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』(作詞・作曲・歌:アンジェラ・アキ)
麻生久美子や宮﨑あおい、南明奈、高橋克実といった豪華声優陣は注目。
★★★★☆
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パリで『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』を抑えオープニング・ナンバーワンを記録したヒット作。
邦題『オーケストラ!』/劇場清掃員として働く冴えない中年男アンドレイ・フィリポフ(アレクセイ・グシュコブ)は、かつてはロシア・ボリショイ交響楽団で主席を務めた天才指揮者だった。彼は、共産主義時代、「ユダヤ主義者と人民の敵」と称されたユダヤ系の演奏家たち全員の排斥を拒絶し、名声の絶頂期に解雇されたのだ。ある日、パリのシャトレ劇場から届いた、出演できなくなった楽団の代わりの出演依頼FAXを偶然目にしたアンドレイは、とんでもないアイデアを思いつく。クビになったかつての楽団仲間を集めて偽のオーケストラを結成し、ボリショイ交響楽団代表としてパリに乗り込もうというのだ。早速、元チェロ奏者のグロスマン(ドミトリー・ナザロフ)に話を持ちかけるが…。
(2010年4月17日公開/フランス映画/ラデュ・ミヘイレアニュ監督) W.D. 5/18
原題が『Le Concert(コンサート)』であるように、この作品はラストのコンサートシーンにたどり着くまでの主人公アンドレイをはじめとする人々の奮闘と葛藤が描かれている。まったく荒唐無稽な話なのだが、さまざまな職業に就いている昔の楽団員をひとりひとり集め、パリへたどり着くまではなかなかうまい作り。しかし、いざパリに乗り込んでからの後半がひどい。みんなそれぞれ観光や商売に色気を出してリハーサルに集まらない。結局、ぶっつけ本番で演奏に臨むという、フランス映画にありがちな、ご都合主義のふざけた話。
そこをグッと引き締めるのが、ラスト15分、若手実力派のソロ・ヴァイオリニスト、アンヌ=マリー・ジャケ(『イングロリアス・バスターズ』のメラニー・ロラン)を招いてのチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」のフル演奏。果たして演奏会は成功するのか!? 奇跡は起こるのか!? アンヌ=マリー・ジャケの奏でる旋律から始まるフル演奏に乗って、実はこの物語で最も重要なある真実が詳らかになっていく。アンドレイはなぜチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲にこだわり、なぜアンヌ=マリーをソリストとして起用したのか。その秘密が明らかになる過程が、僕には少々わかりにくかったが、音楽の勢いで押し切られてしまった。
この映画のもうひとつの主役はクラシック音楽の数々。チャイコフスキー「白鳥の湖」やモーツアルト「ピアノ協奏曲第21番」をはじめ、バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」、ロッシーニ「ウィリアム・テル」ほか、ハチャトリアン、マーラー、リムスキー=コルサコフ、メンデルスゾーン、シューマン、ドビュッシー、パガニーニなどの名曲が贅沢に使われている。
個人的にはパリ側のプロモーター、オリヴィエ(フランソワ・ベルレアン)とパートナーのドタバタ・ゲイ・コンビがツボで大笑いさせてもらった。
★★★☆☆
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『オンエア 脳内感染』/雪深い田舎町の小さなラジオ局。かつて人気ラジオDJだったマジーだが、現在はローカル番組のパーソナリティを務めている。和やかに進んでいた番組は、朝の天気取材に出かけていたクルーが伝え始めた出来事により一変する。人間が人間を襲い、体を引きちぎっているというのだ。クルーは「彼らが何か言葉を発している」と言い残すと突然声が途絶える。番組のリスナーからの情報を集めるうちに、町全体が異常事態に陥っていることを知る。この事態の原因を知っている医者の情報をつかみ、彼自身の登場によってこの集団ヒステリーの正体を知る彼ら。住民たちはあるウイルスに感染していて、それが伝染するのは…!?
(DVDスルー[日本未公開]/2008年製作・カナダ映画/ブルース・マクドナルド監督) W.D. 5/26
住民をゾンビ化するウイルスがごく普通のものなのに哲学的。それをウイルスと知らずに使ってしまうと必ず感染してしまう。このアイデアが新しい。ゾンビが現われるシーンを最小限度に抑え、ただセリフだけで緊迫感を持続させる。その設定が面白い。そしてゾンビ映画でありながら、古典的なホラーの「遠くから徐々に自分の身辺へと恐怖が忍びよって来る」手法を用いて、映画の前半では、見えない怖さが臨場感たっぷりに表現されている。
主要な登場人物は、低音の甘い囁き声で奥方のハートをわしづかみDJマジー(スティーヴン・マクハティ)、ドSの性格でマジーにダメ出しの雨アラレ・プロデューサーのシドニー(リサ・フール)、日本人好みのかわい子ちゃんタイプ・アシスタントのローレル(ジョルジーナ・ライリー)、持論を展開することに命を懸けるメンデズ医師(フラント・アリアナック)の4人だけ。田舎のローカルラジオ局のスタジオだけで物語が進むのだけど、これがシチュエーションを生かした脚色が施されていて観ごたえがあった。こういう仕上がりぶりを「佳作」と呼ぶんだろう。
後半から結末にかけて、腑に落ちない部分多々あれど、オリジナリティを重視したと見れば、ま、いいか。スタッフロール後の映像は意味不明???
★★★★☆
by kzofigo | 2011-08-05 20:01 | ムービービーム























