THE DAYS AFTER

◎BOOKレビュー


THE DAYS AFTER 　東日本大震災の記憶

写真：石川 梵


報道写真とは異なる視点が印象的な、永久保存版とすべき震災の記録。




裂けていくアフリカ大陸や氷河に削られるアラスカなど、地球規模のダイナミズムを対象に、
空から撮ることをライフワークにしているドキュメンタリー・カメラマン、石川梵（いしかわ・ぼん）氏。

3月11日、テレビで信じられない光景を見た彼は、すぐにセスナで被災地の様子を空撮した。
その空撮写真に、2か月にわたって現地に滞在し撮り続けた写真を合わせた（僕のカウントでは）
111点がこの写真集にはまとめられている。




前半の多くは空から見た被災地の姿だ。
20メートルを超える津波が襲い壊滅した村。1200人がビルに孤立した仙台空港。
火災で一帯が全焼した地区に大型船が鎮座するパノラマ写真……地震直後、われわれがテレビで見て
言葉を失った被災地の惨状の数々が、空から撮った動かぬ証しとして記録されている。

途中からは、実際に被害に遭った土地をめぐりながら撮った写真に切り替わる。
首をうなだれて歩く一家。持ち主のわからない無数のランドセル。土葬場で泣き崩れる遺族。
がれきに向かい祈りの行脚を続ける僧侶……被災者に寄り添うように撮った写真からは、
想像を絶する状況に放り込まれた人たちの悲しみや空しさが伝わってくる。




空からの視点は事象を客観化する。そこから等身大の営みにズームする構成が、
奪われたものの計り知れない大きさ、重さをいっそう痛感させるのだ。

人間の記憶は放っておくと風化する。それが他人事ならなおさらだ。
震災直後に感じた不安や恐れを忘れてはいけない……そう真摯に思う人は、
ぜひこの写真集を見て、見続けて、記憶に焼きつけてほしい。
静かに永く、この未曾有の出来事を後世に伝えるために。




繊細な心象風景と大自然の猛威が同居し、
圧倒的なイメージの塊が見る者の心を深く揺さぶる写真集だ。