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本屋めぐり     

次の「オセラ」は2月25日(金)発売。記念の50号。
いま記事執筆の準備作業を行ないチュー。


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                    ▲#49初春号、好評発売中!


そのオセラで紹介する本のブックハンティングで啓文社と宮脇書店、喜久屋書店へ。

どの書店でも、大河ドラマ【江】と【断捨離】が大々的にフィーチャーされてるなか、
宮脇書店・岡山本店で齋藤智裕の『KAGEROU』を10ページほど立ち読み。

あくまでもストーリーを抜きにしての話だけど、
言われてるようなひどい内容ではまったくなかった。

文章がライトノベルのように軽く、読みやすさ増量チュー。
話のすすみ具合やセリフに破綻はなく、ちゃんと整合性がある。

でも、それだけ。

期待の新人が現われたっていう“デビュー感”が皆無なのだ。

たとえば、僕が村上龍の長編で一番好きな『コインロッカー・ベイビーズ』
村上龍、28歳のときの、上下巻に分かれた長編小説。


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24歳でいきなり群像新人文学賞と芥川賞を受賞したデビュー作
『限りなく透明に近いブルー』から数えて3作目。

その冒頭の数ページを読んでみてほしい。
物語の設定と描写と(3作目でも)デビュー感は衝撃的だ。

あるいは、26歳で文藝賞を受賞した山田詠美のデビュー作『ベッドタイムアイズ』


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               ▲主演・樋口可南子で映画化、駄作だった…


『KAGEROU』には、それら2作のように、読者を夢中にさせる“熱”がない。

第9回「このミステリーがすごい!」の大賞を満場一致で取った乾緑郎の
『完全なる首長竜の日』を立ち読みしてみたが、その筆力とエンスー度には目を見張り、
『KAGEROU』とは雲泥の差だった。

これは物書きの端くれとしての“勘”だけど、
『KAGEROU』は「単行本化に当たり加筆しました」とはまったく違う
加筆が施されていると感じた。間違いないと思う。

とくに地の文の形容や比喩に、著者とは別の人物による筆跡が透けて見えるのだ。

朝日新聞の書評欄で甘口の評者が「問題は2作目だ」って書いてたけど、
2作目はないんじゃないかな。
著者の目的は、自分がメガホンを取って自作を映画化することだと思う。

もしもそのとおりで、出来上がった映画が、最近で言えば『アフタースクール』や
『ゴールデンスランバー』ぐらい面白ければ、言うことなし。



『コインロッカー・ベイビーズ』、ハリウッドで映画化される情報に遭遇。だけど、2005年の話だ。
物語の規模を考えると、日本映画界だけでは実現困難だろうから、ハリウッドは納得できる。

出演者は…ヴァル・キルマー、浅野忠信、ヴィンセント・ギャロ、リヴ・タイラー…

主人公のキクとハシは子どもだぞ。キャスティングがおかしくないか?
リヴ・タイラーがアネモネなのか? これもイメージが違いすぎる。

話が頓挫したのか、鋭意撮影中なのか!?

『ノルウェイの森』より『コインロッカー・ベイビーズ』の映画化のほうが百倍、気になる。



『KAGEROU』 だけど、
フリーライター・文芸評論家で通称「トヨザキ社長」こと豊崎由美の談話。

比喩が陳腐。人物造形が薄っぺら。文章が雑で深み奥ゆきがない。
一見、何か言ってるようで、実は何も言ってない。
タイトルが意味不明。『ドナーでどないや?』 でよかったのでは? 
初期のケータイ小説よりマシだけど、早大3年で書いた朝井リュウの
『桐島、部活やめるってよ』 に比べると足元にも及ばない。
彼が受賞した※「小説すばる新人賞(集英社主催)」は花村萬月などを輩出した賞だけど、
『KAGEROU』 は一次通過がいいところ。
ポプラ社小説大賞は賞自体がダメ。大賞受賞者はその後名前を聞かない。
映像化すると監督が肉付けしてくれるから原作より良くなるかも。

※審査員:阿刀田高・五木寛之・北方謙三・宮部みゆき

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ゴーマン上等で言えば、これなら

俺でも書けるじゃん!と思った。

by kzofigo | 2011-01-10 14:55 | ミュージック・ブック