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年の終わりのブックレビュー     

人生の終いじたく  だって気になるじゃない、死んだ後のこと。

中村メイコ/著



「就活」ならぬ「終活」が健筆至極に語り尽くされた、

希望と笑いあふれる、元気はつらつな遺言の書。

こんなに生き生きとした文章を読んだのは久しぶり。

歳を濃密に、そして前向きに重ねた人だからこそ記せる文章だわ。


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作家・中村正常の長女として生まれ、わずか2歳8か月にして

映画『江戸っ子健ちゃん』でデビューした、中村メイコ。

(「ケーキ屋ケンちゃん」や「洗濯屋ケンちゃん」のルーツかも!?)

1957年に作曲家・神津善行と結婚し、今や芸歴73年、結婚生活53年。

その間に子ども3人を、手を抜くことなく育て上げ、家庭をしっかりと守ってきた。

(長女・神津カンナ、二女・はづき~夫は杉本哲太、長男・善之介)


76歳でのトルコ旅行が体にこたえ、

「飛んでイスタンブール」※が「這って~」になり、つくづく体力の衰えを感じる。

(※1978年、作詞・ちあき哲也、作曲・筒美京平、歌・庄野真代~大阪市東淀川区出身)

それを機に、自分の最期に向かってさまざまな整理を行なう「終活」を始めた。

この本は、その「終いじたく」を通じて、彼女独特の「希望的老後観・死生観」について、

ユーモアを交えて綴った、パワフル遺言エッセイだ。


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「終活」に際してのポイントをいくつか挙げると、

「延命措置はお断り」、「病院で死にたい」、「好きな服でお棺に入りたい」、

「家族に見送られたくない(リチャード・ギアのような先生に看取られて

すっと死にたい~『徹子の部屋より』)」、「神津さん(夫)よりちょっとでも先に逝きたい」、

「追悼番組を『徹子の部屋』でやってほしい」などなど…。

それぞれのユニークな理由は、読んでからのお楽しみ。


大切な家族や森繁久彌や杉村春子、高峰秀子、森光子、黒柳徹子ら

芸能界のスターたちとの特別なエピソードから、大好きな家具や着物、街の思い出まで、

まるで彼女と喫茶店で対話しているかのように臨場感たっぷりに語られている。


大親友だった美空ひばりへの思いが詰まったくだりには、思わずホロリとさせられた。


「終いじたく」……「おくりびと」に並び立つ、いい言葉だね。



◆青春出版社 1470円

by kzofigo | 2010-12-27 01:10 | ミュージック・ブック