「くじけないで」 ブックレビュー
くじけないで 柴田トヨ/著
今年99歳になる栃木県在住の柴田トヨさんは、92歳の時に息子の勧めで詩を書き始めた。
そして、産経新聞の読者投稿欄「朝の詩(うた)」に投稿するようになる。
彼女の詩は、たちまち読者のみならず選者の心を惹きつけ、大きな話題になり、
一冊の詩集にまとめられた。
何でもない詩になぜか涙があふれる、何でもない女性の白寿の処女詩集だ。
本書には、計42点の作品と、
著者が歩んで来た約一世紀の軌跡を記した『朝はかならずやってくる』が収載されている。
詩にはどれも、やさしい風が吹き、暖かい陽が差し込んでいるようだ。
一文が短く歌詞のようにリズミカルで、音読するのが楽しい。
一編の詩を性格付ける最後の一行も素晴らしい。
とくに感心するのが、記憶の切り取り方と言葉の選び方のセンス。
とても90代とは思えないほど若々しく、その感受性はまるで10代の少女のようにみずみずしい。

老人ホームに母を訪ねた時の風景描写が切ない『母』。
夫に子どもを授かったことを告げた日の喜びに満ちた『思い出』。
62歳の息子に体を洗ってもらう心地よさが滲み出た『風呂場にて』。
…やはり家族をめぐる詩には涙腺が緩みやすい。
僕は、詩作を始めてからの凛とした生き方を表わした『秘密』がとくに好きだ。
ところどころにかわいいイラストが添えられている。
色鉛筆で塗って自分だけの詩集に仕上げるのもいいかもしれない。
トヨさんの夢は、自分の詩集が翻訳され、世界中の人に読んでもらうこと。
自分を励ましながら、それ以上に読む人を励ましているこの詩集なら、
きっと夢は叶うはずだ。
●飛鳥新社 1000円
by kzofigo | 2010-10-25 01:24 | ミュージック・ブック























