マイ敏江玲児、マイライフ

「オセラ」で紹介したかったのに、岡山に上映館がなくて涙を呑んだ作品。最近、良質の小品で岡山に上映館がないものが増えている。それだけ配給会社が多くなり、買い付けられる作品が増えているのだろう。しかし『マイレージ、マイライフ』はジョージ・クルーニー主演、ドリームワークス製作、パラマウント配給のメジャー映画なのだ。
ライアン(ジョージ・クルーニー)は「リストラ宣告人」。年間322日を出張のために費やし飛行機内とホテルで過ごす人生を送っている。貯まったマイレージは目標の1000万マイル目前。「バックパックに入らない物は背負わない」がモットー。面倒な人間関係を嫌い、独身主義で、旅先で出会った女性アレックス(ヴェラ・ファーミガ)とも気軽な関係を続けていた。
しかし、ライアンの目標を阻む新人ナタリー(アナ・ケンドリック)が登場。彼女は現地出張を廃止してネット上でリストラ宣告を行なう合理化案を提案する。当然ライアンは反対し、ナタリーと衝突する。そこで上司のクレイグ(ジェイソン・ベイトマン)は、ライアンにナタリーの教育係を命じ、彼女に実際にリストラ宣告を経験してもらうため、2人で出張させることにする…。

オープニングのタイトルバックが『北北西に進路を取れ』みたいにシャレている。
原題は『Up in the Air』。めずらしく内容をうまく表わし語感のいい邦題に恵まれた作品だ。人間関係のしがらみを避け、効率だけを優先してきた「リストラ宣告人」ライアンは、自分よりさらに効率を優先させるネット世代の新入社員ナタリーの教育係を任されたことで、これまでの自分を振り返り、本当に大切なことは何なのかに気づいていく。その「気づき」の物語を『JUNO/ジュノ』のジェイソン・ライトマン監督は軽妙なタッチで描いている。ライトマンだけに?
ネット全盛の現代における人と人との心のつながり…このシンプルなテーマを、具体的なエピソードへと落とし込む、その落とし具合がストレートで分かりやすいうえに、絶妙。多くの映画祭で脚本賞を受賞したのもうなづける。ぴったりハマッたキャスティングと俳優の達者な演技、忌たんのない会話、それからシニカルなユーモアを含んだ洒脱な演出によって物語はテンポよく紡がれていく。
ビジネスライクに解雇を言い渡される雇用者の反応が人それぞれで興味深かったが、日本の経済状態が改善されないと明日はわが身で、僕は会社員じゃないけど、ちょっと身につまされた。
ナタリーとの確執や妹の結婚式、アレックスとの恋模様といった的確なエピソード。抑制の利いたスタイリッシュな映像。順風満帆な人生を嵐が襲う前と後との心理描写。それらを巧みに織り成し、ジェイソン・ライトマン監督が人生の機微を繊細に描いた、地味ながら秀作だと思う。
しかし、少し地味すぎたね。もっと深い余韻を残してほしかったため星ひとつマイナス。ストリートミュージシャンぽい素朴なギターの弾き語りが効いていて、効果的だっただけに、なおさら残念。
おすすめ度★★★★☆

さて、ライアンはマイレージ1000万マイルの夢を叶えられるのだろうか?
ライアンは「I like you」の割り切った男女関係だったはずのアレックスを本気で好きになっていることに気づき、シカゴにある彼女の家を訪ねるタブーを犯してしまう。その際、彼はついでに「カウンティ病院」に寄ったのかどうかが、ものすごく気になった(笑)。
最近のレンタルDVD、特典映像の「未公開シーン」が充実してるよね。このDVDも短編映画が1本出来上がるんじゃない?と思わせるほど見ごたえがあった。カットされたシーンなのに、そのシーンだけで。
ところで、この映画、女性はどう観るんだろう?

by kzofigo | 2010-10-05 12:08 | ムービービーム























