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インパクトの瞬間…     


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【インパクト】『いたずらラッコのロッコ』など読書感想文の課題図書でお馴染みの絵本作家、故・長新太氏。彼の作品に月が地球にぶつかる話があった。僕の記憶では、大西洋にぶつかった月はベチャッと広がり、欧州と北米が地続きになるのだった。

この映画は「39日後に月が地球に衝突する」究極のディザスター(災害)ムービーだ。

【あらすじ】
1万年に一度という珍しい大流星雨の夜、多くの人が夜空を見上げていると、月の近くに太陽光を反射する星が現われる。それは直径19kmもある天体だった。天体は月に衝突する。飛び散った破片はその夜のうちに世界のあちこちに落下する。地球に落下した破片が発見され、高い密度を持つ褐色矮星(本当は白色矮星)のかけらだと判明する。

月にめりこんだ褐色矮星のかけらの質量は、地球の約2倍と判明する(地球の約2倍ということは月の160倍。そんなもんが衝突したら月は粉々になる)。衝突によって月の軌道が変化し、地球の周囲を楕円軌道を描いて回りはじめる(質量比が2:1になったら、共通重心は地球から約26万kmの地点になる。その点を中心として、月と地球は向かい合って公転することになる)

月の接近で電磁場に乱れが生じ、各地で謎の放電現象が起きる。月の軌道は地球の引力に引かれてしだいに変化し、らせん軌道を描いて39日後に地球に衝突すると判明する。地球滅亡の危機を回避するため、天文学者アレックス・キトナー博士はある計画を提案をする…。※( )はあるSF作家の科学的に正しいツッコミ

米国ABCで放映されたドラマ『ムーン・パニック』のDVD化。日本でも昨年NHKのBSハイビジョンで、同タイトルでオンエアされたらしい。独米加合作によるSFパニック。主演はデヴィッド・ジェームズ・エリオットとナターシャ・ヘンストリッジ。2人とも知らない。登場人物で知ってるのはキトナー博士の義理の父親役、『ベイブ』のジェームズ・クロムウェルだけだった。ブタじゃないよ、老人のほう。

テキサス州に匹敵する大きさのアステロイド(小惑星)と地球の衛星・月の違いはあれど、本作のストーリーは『アルマゲドン』に酷似している。人類に残された時間が、『アルマゲドン』が18日、この映画では39日とわずかしかないこと。計画が1度は失敗に終わること。危険な天体の軌道を変えるべく選ばれたスタッフがアタックを仕掛けること…。違いは『インパクト』の製作予算がローバジェットと呼ぶにふさわしいほどナイマゲドンなことだろう。

しかし、科学的な矛盾や物理的な無理があるのを承知のうえで観る者の興味を引き寄せる映画的G(重力)と引力が、この映画にはある。

ひとつは、低予算であるがゆえの「ひたむきさ」ではないだろうか。俳優やスタッフたちの同じ方向をめざした献身的努力によって、良心的なB級感が漂う異色作になったと思うのだ。まともに考えれば、計画が成功する確率は、中山律子が目隠しをしてビッグフォーを倒すよりも極めて低い。だが、物語への思い入れの強さが冷静な判断力を凌駕する。そんな魅力が、この作品には確かにある。

もうひとつは、3時間の長尺のなかで、登場人物の人間描写に十分な時間が割かれていることだろう。この労力は、物語の進行とともにジワジワと効いてきて、クライマックスで最大限の効果として結実するのだ。

タイトルは『ムーン・パニック』そのままのほうが、『ムーン・アタック』、それに続く『ムーン・アタックNo.1』などのパロディ作品が作られる可能性も含めて、「インパクト」があっただろう。

見上げると、矮星の衝突を受けてからの月は、深くひび割れ、飛び散った無数のかけらとともに、天空に無残な姿をさらしている。その光景は目を覆いたくなるほどだ。「今月今夜のこの月を……」の貫一&お宮も、これがフィクションで助かったと、胸をなでおろしているに違いない。

まーるい まーるい まんまるい~♪ やっぱり月と買い物はマルイに限る。★★★★☆


この作品、セルとレンタルで形式が違う。冒頭の画像はセルのパッケージ。セルは「完全版」で1点のみ。レンタルは2点。『インパクト』『インパクト2』の前編・後編に分かれているので、要注意。


 ▼この2点がレンタルのパッケージインパクトの瞬間…     _b0137183_258403.jpgインパクトの瞬間…     _b0137183_259928.jpg

by kzofigo | 2010-08-10 03:14 | ムービービーム