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「地下書店」  及川恒平     

学生時代に小室等率いる「六文銭」に参加。

アングラ劇団の劇中歌だった『面影橋から』で1972年にソロデビュー。

現在、「六文銭’09」のメンバーでもある及川恒平の最新ソロアルバム。

札幌の歌人・糸田ともよとのコラボレーションによって誕生した。

歌集から言葉を連れ去って詞を紡ぎ、時には糸田に詞を書いてもらったという。

異次元的で想像力の触れ幅が大きな糸田の短歌の世界が広がって曲となり、

及川のヴォーカルとみごとに一体化している。

数年かけてライヴで歌いこまれた14曲は、穏やかでよく通るヴォーカルとともに、

耳から心根へそっと忍び込んできて、実にかぐわしい。


「地下書店」  及川恒平     _b0137183_17464833.jpg


とくに、愛する人との長いお別れを、たくましい想像力によるメタファーで悲しく歌うタイトル曲は、

2人の世界が豊かに響きあっていて、哀感極まる。

また、ギターをピアノの伴奏に替え、違った歌唱で2度歌われる、

澄み切った『水のカノン』も印象深い。

及川のポエトリー・リーディングによる『冬の鏡』を聴いていると

縦書きの詩を見ながら及川に合わせて音読している自分に気づく。

クラシックとアコースティックのギターやハーモニカ、ピアノの

歌に寄り添うような伴奏が程よく優しい。

J-POPと呼ばれる外国語が氾濫した混沌の世界と及川作品が立錐する静寂の世界。

このアルバムを聴いていると、どちらが本当の現実なのか分からなくなってくる。

しかし、実はそのパラレルワールド的な浮遊感を楽しめばいいことに気づくのだ。

繊細で壮大な言葉とふくよかなメロディで、ゆったりと空想のひと時を過ごそう。



▼及川恒平 公式サイト
http://www.oikawasong.com/

by kzofigo | 2010-08-27 00:22 | ミュージック・ブック