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サヨナラ暴投を、もう一球     

年明けから1か月が経たないうちに、著名人の訃報が続いている。


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アニメ 『ゲゲゲの鬼太郎』 で「目玉おやじ」の声を担当した声優の田の中勇氏(満77歳没)。

細い体を目一杯に使ったサイドスローから鋭い球をくり出し沢村賞に2度輝いた

元・プロ野球投手の小林繁氏(同57)。

寺山修司に見出され、黒装束に身を包んだ独特のスタイルによる音楽活動で知られた

アンダーグラウンドの女王・浅川マキ氏(同67)。

TV番組のリポーターやラジオのパーソナリティとして活躍したタレントのミッキー安川氏(同76)。


「おい!鬼太郎」と目玉おやじの声マネをしなかった少年少女はいないだろう。

詩と音楽を完璧に自分のなかで一体化させて表現した浅川マキは、気に入ったミュージシャンとは

必ず共演を実現させ、彼女から声がかかるのは一種の勲章だった。

アポなしインタビューで 『華氏 911』 ほか問題作を撮り続けている映画監督マイケル・ムーアは、

「アメリカのミッキー安川」と言って差し支えないと思う。


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小林繁の急死を知ったときはショックだった。「空白の一日」があった1978年11月、

僕は東淀川大学の1回生で、阪神タイガースのファンだった。

この年のオフ、タイガースは不動の四番バッター田淵幸一を古沢憲司とともに

新球団・西武ライオンズへトレードに出し、竹之内雅史と真弓明信、若菜嘉晴らを獲得。

事実上、ミスター・タイガースの座を、田淵から掛布雅之に譲り渡したことになる。

翌1979年、監督にブレイザーを迎えた新生タイガースは、小林が22勝で最多勝、

掛布がホームラン48本で本塁打王の好成績を残したが、チームは4位でシーズンを終えた。


この年のラインナップを見ていると、切なくなる。ガッツあふれるプレーが信条だった

マイク・ラインバックと加藤博一の2人がすでに帰らぬ人となっているからだ。

また、小林や江本孟紀、山本和行に代表される、プライドを持った「大人のチーム」だった。

「特徴があること」をよしとするプロの世界で、小林や掛布、竹之内たちの

無手勝流の個性的なフォームは見ているだけで楽しかった。


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数年前、まだ日本のプロ野球が好きだった頃、野球について語り合う掲示板サイトの常連だった。

そのなかで、「美しい投手は誰か?」と問いかけたことがある。

僕が考える「美しい投手」の定義は、こうだ。


◎圧倒的な全盛期を迎えたことがある。

◎選手生命が比較的、短期で終わった。

◎そして、もちろんフォームが美しい。



僕の回答は、伊藤智仁今中慎二だった。

サイト全体では、山田久志が、最も美しい投手に選ばれた。

「美しい」は無常と隣り合わせで、美しい投手は無常観を漂わせていて、

時として敗者がよく似合うのかも知れない。


美しいフォームとはいえないが、江川卓との不本意なトレードを冷静に受け入れ、

敬遠でサヨナラ暴投しても取り乱すことなく、13勝を挙げた年に引退を表明した、

その「潔さ」に敬意を表し、誠に勝手ながら「美しい投手」の殿堂に

小林繁の名を加えさせていただきたいと思う。


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今はただ亡くなられた方々の足跡に対し、

「ありがとうございました」と、深く頭を下げたい気持ちで一杯だ。

ご冥福をお祈り申し上げます。

by kzofigo | 2010-01-21 23:22 | スポーツ旬報