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川村かおり 1988年     

28日午前11時1分、
がんと闘病しながら活動していたロック歌手の川村カオリが、
東京都内の病院で亡くなった。38歳だった。

1988年の雑誌Switch、139ページから8ページにわたって、
「ふたつの大地」というタイトルのハービー山口によるフォトセッションが載っている。
被写体は11月にデビューすることが決まっている17歳の川村かおりだ。
撮影の時はまだ英国にある日本の全寮制高校に通っている女子高生だった。
ハービー山口の文章の合間に「かおりのノートから」とクレジットされた
川村かおりの日記のような文章が収められている。


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二つの大地手にして育った。
色わけされて生きてきた。
一人がいたいほどしみた。
涙があふれる夜、広い大地の夢を見る。
愛のかなさしさくれたあの夜を忘れはしないよ。
はりさけそうな胸のおく、君はとおりすぎてきえてゆく。
冷たいベッドに一人。
             ------------かおりのノートから


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街の中、彼女は一人でナンパまち。
すれた愛にたよって笑う。
机の上にキスをするもうお別れ。
きみの制服にももうさいごだね。
恋に傷ついた女の子達は、泣くのは一度で充分だから、
時のたつのをまてば、輝いていたことにきづくから、
STILL SHINE
朝早く抜け出した内緒の約束。
パパになんていいわけしよう。
君の名前手の上でため息。
すてきれない想い出いっぱい。
泣き虫すぎる女の子達よ。
そろそろ前をむかなくちゃ。
そのうちその恋が
きれいにしてくれるのだから。
STILL SHINE
                      かおりのノートより


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一番大切なものを残してきた国は、ふとんに入ると一日が始まる。
帰りたい。
タクシーに乗ると「日本まで」って言いたくなる。行けるわけないけど。
気づかなかったことが反射してつもっていく。
胸の奥で笑っている人の顔。たまんないほど愛おしく感じる-------逢いたい。
手紙をもらう時、まるでおりの中の動物がえさをもらう時のように興奮する。
長い道のりをかけてきたエアメールは、手にすると照れる。
三分もたたないうちに返事「帰りたいけどね」と書く。
きっと会ったら、苦笑いをして抱きしめてしまうだろう。
「日本」があったかい。
                    -------------------------かおりのノートより


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反発を感じるほど純粋に書きしたためられたソリッドでナイーブな内面と、
そして強い意志を感じさせるルックスに、
一体どんなミュージシャンになるんだろうと期待した。

でも、辻仁成がプロデュースした彼女は、
あらかじめ用意されたスペースにすっぽりはいってしまっていた。
それが窮屈だったから22歳で表舞台から消えたのだろう。

十数年後、ファッション雑誌の広告だったと思う。
川村かおりはBJC達也はじめ猛者たちを引き連れたスレンダーな姐御になって輝いていた。
ああ、ポジションをつかんだんだなあとうれしくなった。

ロシア人の母の乳がんによる死去。自分の乳がんの発覚。
結婚、出産、離婚、闘病、左の乳房全摘で完治したと思ったのに転移、また闘病。
その間の彼女の気持ちを考えると、掛ける言葉さえない。

歌いきったの? 生ききったの?
それをこの耳で確かめて、不安と期待の渦中で胎動する17歳の彼女の存在を
もう一度見つめ直したかった。

17歳の彼女に期待した音楽を体現している彼女自身の歌で川村かおりを送りたい。










「かおりの夢って何?」
「歌うことが一番大切なこと。これだけは絶対確かなんだけど」

by kzofigo | 2009-07-30 02:35 | ミュージック・ブック