Movie Groovy 1

原因不明の何ものかによって、人間の神経あるいは脳が侵され、果てには自殺してしまう。舞台はアメリカ東北部一帯。エリア限定のパンデミック・パニック・ムービー。難儀なのは、何ものかが、見えない、匂わない、触れないこと。たとえば、『ブラインドネス』ではサバイバルするために形成したグループ同士が争うことになる。『28週後...』では感染者を封じ込めた地区からの脱出劇。この映画が面白いのは、危険地域内で安全なルートを探りながら主人公たちが移動していくところ。原因とか結論とかは、割りとどうでもよくて、プロセスを楽しむ映画だと思う。
M・ナイト・シャマラン監督はホラーやサスペンスの形を借りて、崩れつつある人間関係の修復を描いてるんじゃないだろうか。「シックス・センス」もブルース・ウィリス夫婦がメインになっているけど、実はあの亡霊が見える男の子と母親の関係修復劇だったんじゃないかな。ラスト近く、交通事故のせいで渋滞に巻き込まれた車の中で、母と子がおばあちゃんの話をするんだけど、そこがクライマックスで、正直涙したもんね。
「ハプニング」は、主人公の教師が、関係がぎこちなかったリンダ・ロンシュタット似の妻と、友人(←「ER」にラテン系医師で出てる)の娘(←可愛いかった)と3人での生活が、危ういながらも希望を抱かせる作りになっている。怖いのは、原因じゃなくて、男の子2人に散弾銃を発砲する姿を見せない男とか、ひとり暮らしのオバサン。あのオバサンはマジで怖かった。
おすすめ度★★★☆☆

大型ヨットでメキシコ湾沖にクルーズに出た6人の男女。泳ぎを楽しもうと海に飛び込んだ彼らは、ヨットに上るためのハシゴを出していなかったことに気づく。ヨットに戻る方法を見つけられないまま、立ち泳ぎを続けるしかない6人は徐々に体力を失っていく…。
低予算ながら大ヒットを記録した海洋サバイバル・パニックの第2弾。前作よりさらに恐ろしい実話をもとに、自分たちの不注意から広大な海のど真ん中で命の危険に晒される若者たちの恐怖体験を描いたサスペンス。前作が「取り残された恐怖」を切り取ったほぼドキュメンタリーであったのに対して、本作は「そこにヨットがあるのに上がれないパニック」を描いたちゃんとした映画になっている。
ヨットの最高峰アメリカズカップで最下位になったチームに与えられる罰ゲームのような内容だ。目の前で次々と展開される「信じられないこと」に、開いた口がふさがらなくなる。閉口はしません。まず、前作はアメリカ映画だったのになぜか今回はドイツ映画に変わっている(←これ、大したことねーじゃん)。子ども時代のトラウマのせいで水恐怖症になり救命胴衣を着用した妻を抱えた夫が自分もろとも海へ飛び降りる。やっと手にしたケータイを怒りに任せて海に投げ捨てる。勇気ある女性がひとり陸に向かって泳ぎだすがその後のストーリーの中で登場せず、つーか放ったらかし。
早い話がバカのオンパレード。実はただひとり海に入らずヨットに残った人物がいる。しかし、その人物がヨットのクルージングに参加すること自体、僕にはアンビリバボー! これも大勢でワイワイ言いながら楽しむツッコミムービーだね。3分に1度ツッコミどころがやって来る!?
★★★☆☆

想定外の面白さ。というか、想定を外れざるを得なかった面白さがある作品だ。カット割りに乏しい画面を支えているのは『モンスター』のシャーリーズ・セロンを彷彿とさせるスーザン役ブランチャード・ライアンの不思議な存在感。彼女と夫ダニエル役のダニエル・トラヴィスは、50匹のマグロ肉でおびき寄せた鮫がうようよいるバハマ沖で、120時間以上も本当に海の中で過ごし、撮影されたらしい。
脚本・演出、撮影・編集、視覚効果・音楽など、あえて「抑制」しているんじゃなくて、精一杯やってこれだけという、いい意味でのチープさっていうか、シンプルな作りが、予定調和を逸脱した、あるいは逸脱せざるを得なかった新鮮な「怖さ」を醸し出している。
エンドロールと同時にオチとなる映像が流れるのだが、これなど素人考えでも、冒頭に伏線として持ってきたほうが効果的では?と思う。だけど、あくまでも時系列に則った編集スタイルには好感が持てる。また、登場人物たちが無名であるうえにカメラが手持ちなので、記録映画かと錯覚。ドキュメントのような虚飾のなさ。そこがこの映画の特徴であり、大きいとは言えないけれど魅力ではないだろうか。
このDVDは、夏のリゾート必携アイテムだ。ほとんど主人公2人と同じ目線の高さで撮影されているので、海面にプカプカ浮かびながら、防水携帯プレイヤーでこれを観れば、臨場感バツグン!
★★★★☆

80歳の老人として生まれ、年を経るごとに若返っていく。そんな数奇な運命を持ち生を受けたベンジャミン・バトン(ブラッド・ピット)。彼は老人養護施設で育てられ、そこを出て、さまざまな人生経験を積む。シワくちゃだった顔からシワが失せた頃、思いを寄せる幼馴染みのデイジー(ケイト・ブランシェット)とようやく一緒になる…。
まるでビデオテープの巻き戻しのような男の一生が、抑えの利いた演出で実に繊細に描かれている。ベンジャミンが記した日記をデイジーの娘が母親に読んで聞かせる形で進んでいく物語は、ブラピを「老人のような赤ちゃん」から徐々に若返らせるVFXをはじめ、劇的で示唆に富んだ設定や、ベンジャミンのモノローグが効果的で、観る者を映画に惹きつけて離さない。
原作はスコット・フィッツジェラルドである。よくこんな着想を得たもんだ。主人公のベンジャミンは数奇な運命にありながら、『華麗なるギャツビー』と同じく、恵まれた裕福な人生を送る。そして、孤独である。計り知れないほどの孤独を抱えながら、ベンジャミンはそれを表に出さない。
ベンジャミンは幼少時代を死期の迫った老人たちに囲まれて育つ。この養護施設でのエピソードが味わい深いのだが、幼い頃から他者の死、あるいは自らの死と間近に接して育ったベンジャミンは、まるで悟りを開いたように自らの運命を静かに受け入れ、逆らわずに生きていく。つねに現実を肯定的にとらえ、前向きで、平和主義を貫く。だから生涯、人々から愛され続けるのだ。
『セブン』のデヴィッド・フィンチャー監督は大河的ドラマにあっても揺るがぬストーリーテリングの才気を発揮し、167分間を一気に見せる。観た後は、長く静かな余韻に満たされ、切なくも幸せな気持ちで、しみじみと「オレもアタイも、人生をがんばろう」という気になれるだろう。ブラピが『テルマ&ルイーズ』の頃のような若々しさで登場したときは自分の性別を忘れてステキ!と思ってしまった。
★★★★☆
by kzofigo | 2009-08-11 00:42 | ムービービーム























