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あれがあなたの好きな場所

『男と女 -TWO HEARTS TWO VOICES-』

                     ~稲垣潤一


J-POPはいま、カバーアルバムのブームなのだ。
德永英明、岩崎宏美、槇原敬之、中西保志、甲斐よしひろ……
実力派シンガーが選ばれた曲を歌うのだから出来がよいのは当然なのだ。

その激戦区に、『ドラマティック・レイン』『夏のクラクション』(←名曲!)
『クリスマスキャロルの頃には』の稲垣潤一が勝負に出た。
数あるカバーアルバムとの違いは、
全編が女性シンガーとのデュエットであること。
これは稲垣潤一が持つクリアな声質とディフェンシブ(笑)なキャラクターだからこそ
成り立つ企画じゃないかな。


まず選曲がいい。
1970、80、90、2000年代からセレクトされた全11曲は、
その歌がヒットしていた時代の匂いがフラッシュバックするような
スタンダードなナンバーがずらり。
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そしてデュエットの相手は、
高橋洋子、小柳ゆき、松浦亜弥、辛島美登里、YU-KI(TRF)、大貫妙子、
露崎春女、白鳥英美子&白鳥マイカ、太田裕美、山本潤子、中森明菜
の11組。

55歳にして透明感を失わない稲垣潤一の歌声が素晴らしい。
女性陣もそれぞれに持ち味を発揮した歌唱が光る。
とくに辛島美登里、白鳥英美子、山本潤子といったベテラン女性歌手との
「あ、うん」の呼吸のハモリが秀逸だ。

すべての曲目はCDショップで手に取って見てのお楽しみだけど、
お気に入りの何曲かを紹介。

松浦亜弥との『あなたに逢いたくて』(原曲・松田聖子)は
「あやや」のアイドルとしての新境地を感じ、
露崎春女(はるみ)との『あの日にかえりたい』(荒井由美)は
2人のキーが同じであり、長年のデュエットに聴こえることにびっくり。

また山本潤子との『秋の気配』は
2人の呼吸がぴったりでオフコースとは違った曲の魅力を見つけ、
太田裕美本人との『木綿のハンカチーフ』は禁じ手なのだが、
あの声に代わるシンガーがいないのだろう、
歌の悲しい結末には高校3年の時と同じように胸がキュンとする。

露崎春女のほかにも、アニメ主題歌界の高橋洋子、トワ・エ・モアの白鳥英美子と
娘マイカとの参加など、新しくてうれしい発見があった。
それにしても大貫妙子の「声の存在感」はいつ聴いてもすごいし、心地いい。

こういう男女のデュエットアルバムでは編曲家の腕の見せどころ。
だって(露崎春女を除き)歌い手2人のキーが違うんだもん。
その点、ハモリのアレンジに多少無理があるものの、
PIECE OF MY WISH』をラヴァーズロック風に仕立てるなど、
非常にいい仕事をしていると思う。

思わず一緒に口ずさんでしまう、ヘヴィー・ローテーション必至、
企画勝ち、実力勝ちのアルバムなのだ。


欲を言えば、森高千里との「ドラム&ヴォーカル」デュオを視聴したかったな。
中島みゆき『ファイト!』あたりで。

by kzofigo | 2009-02-02 15:43 | ミュージック・ブック