「派遣切り」より怖い「佐藤狩り」
◆DVD『リアル鬼ごっこ』

あらすじ
佐藤翼は、アル中の父と生まれつき病院に入院している妹・愛の世話をする優しさを持っていたが、学校では一匹狼の不良少年だった。敵対する佐藤洋とは幼馴染みだったが、いつの頃からか二人は不仲になっていた。ある時、洋たちのグループに追われて逃げ回っていた翼は、突然、元の世界と平行して存在するパラレル・ワールドにワープしてしまった。そこでは、王と名乗る人物による「佐藤狩り」が行なわれていた。捕まったら殺されてしまう、「リアル鬼ごっこ」だった・・・。若者の間で絶大な人気を誇るらしい作家・山田悠介のデビュー作にして、文法を無視した問題作ながら、100万部を越えるベストセラーとなった同名小説の映画化。出演者:石田卓也 吹越満 松本莉緒 谷村美月 大東俊介ほか
少しでもストーリーに触れるとネタバレになってしまいそうなので、周辺情報ばかりで申し訳ない。「佐藤さん」を鬼が追いかける「殺人鬼ごっこ」っていう発想が新しくて面白い。「鬼ごっこ」の期間中に結婚や養子で「佐藤」じゃなくなればいいのに・・・と思ったが、それも禁止されてるんだろうね、原作では。
とにかく走る。『卒業』のダスティン・ホフマンや『フォレスト・ガンプ』のトム・ハンクスなんかより走る。『28週後...』のゾンビ並みに走る場面が持続するので、映画全体が疾走していて、たるんだところのないのがいい。
安普請のセットと凝ったCG映像との落差が激しい。国王の宮殿(?)はまるでショッカーのアジトのようにチープだ。しかし、「仮面ライダー」みたいな特撮ヒーローものが醸し出していたようなB級感は捨てがたい魅力だし、鬼が被っている「お面」はウルトラマンと鉄人28号の「合体」を匂わせて、そういった映画のタッチや造形美術に関しては、それはそれで十分に面白い。
意外にも、出てくる女優さんたちがみんな綺麗だ。準主役級を揃えた俳優たちも非常によく頑張っている。なかでも、吹越満が渋くてかっこいい。ただし、国王を演じている最もビッグネームの俳優は、はっきり言ってミスキャストだと思う。北野武のあの映画では適役だったが、こういうSFものでは上手さ以外にキワモノ性にこだわってほしい。その意味で、本田博太郎、小日向文世あたりがいいと思った。
そして、これは声を「強」にして言いたいのだが、佐藤蛾次郎、佐藤浩市、佐藤B作、佐藤隆太、佐藤藍子、佐藤江梨子、佐藤健など「佐藤姓」の俳優が、本人役でそれぞれに逃走劇を披露するカメオ出演を、なぜに挿入しなかったのか!? これはぜひ観たかったなあ。
また、「鬼ごっこ」のアナウンスを告げる拡声器にUHFアンテナが必ず付いているのは地デジのPRなのか? 「佐藤さん」以外の人たちは鬼ごっこ中、どこで何をして過ごしているんだろう? 国王が誰かすぐ分かってしまうのは故意になのか?……などなどツッコミどころ満載のノンストップ・サバイバル・ムービーで、想像してた以上に楽しめた。
おすすめ度★★★☆☆

▲「こんなものを本にして売り出しても良いのか!?」と
文章の酷さがwebでも話題になった原作(文芸社版)。
▼こんな感じの文章。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1414494829
by kzofigo | 2009-01-03 23:10 | ムービービーム























